週イチB級グルメ

浅井 孝郎*
わが家は夫婦二人であるが、朝食と昼食はそれぞれ別の献立である。私の朝はお粥、昼は手製の麺類。妻の朝はパン、昼はお粥のパターンである。夕食には惣菜をあれこれ並べて乾杯する。私は宮崎の焼酎、妻は発泡酒を少々で、お互いご飯無しの日が多い。              
月に二度ほど、相談が決まると私がバスで赤羽市場に鮮魚を買い出しに行く。やっぱり刺身は日本酒に限ると勝手な理屈を並べて盃を傾け、ご機嫌の手巻き寿司で締めている。       
四十年のサラリーマン生活を終えて金婚式を迎えた私たち夫婦は、その期間の大半を、仕事と子育てに忙殺され、経済的に贅沢の味と経験を知らない。かって良き時代の象徴とされた「中流の上」を目指して頑張り、退職後の現在を至福の時と満足している。   
足腰に難点のある私に比し、妻はゴルフと水泳に励んでいる。特にゴルフは車を持っていないにも拘らず、お友達に恵まれて、毎週火曜日にプレーを楽しんでいる。昨年五月に一〇〇〇回記念の謝恩会を開いたが、来夏に一一〇〇回目指して張り切っている。    
帰宅してからの夕食の準備は億劫だろうと思い、一年ほど前から簡単な弁当を買う事にした。元々駅弁大好きの二人なので、あれこれと物色して共通の結論に達した。東京駅と上野駅構内で売っている、深川めし弁当である。煮穴子、野菜煮、香の物とあさりの炊き込みご飯に酒も進み、二人にとって絶品である。いそいそと出掛けて求めているが、二箱で千七百円と手ごろな値段も嬉しい。         
ところが今年になって更なる献立に出逢った。B級グルメ紹介の他愛もないテレビ番組のおかげで知ったコンビニ店の弁当である。個人的には、牛めし屋に入るのは、年齢的に若干躊躇するが、一方には誰でも出入り自由の気安さがあると思う。      
今までは全く無関心だったコンビニ店は、街中至るところにあり、食品は実に品数豊富で、値段は安く、美味である。特に鮮度管理に気配りがなされているのが、一番のお気に入りとなった。バスで3分ほどのS店が至便で、最近は、あさりの炊き込み弁当と海鮮ドリアにはまっている。焼酎と発泡酒の何れにも合うとわが家の評判上々である。      
殆どの品の単価が四百円〜四百五十円と嬉しくなる値段であり、レンジでチンの時間を聞いて鼻歌まじりで持ち帰り、食卓の準備を整える。夏場には五時頃から冷房を適温に設定して、妻の帰還を心待ちしている。女房がご機嫌ならば家庭は円満必定。五十年の共同生活で学んだ、か弱い亭主の哲学である。
週イチB級グルメはわが家にとって、まさに高級レストランに優るメニューとなった。終日自由が満喫できる火曜日が待ち遠しい。 
 
 
 
* 八期生浅井伸子さんのご主人です。(HP管理者)
 
 
 
 
 
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