雑感語呂あわせ

浅井 孝郎*
九月第三月曜は敬老の日である。気持ちだけは若い心算でも、当日誰からも祝ってもらえない時は、一抹の寂しさを味合い、人間とは誠に勝手なものと苦笑している。
先日、テレビで報じていたが、俗称「孫の手」が九月の日用品売り上げの中で、上位とのことであった。お年寄り向けに痒いところに手が届く便利さと安価さが、プレゼントとしての人気商品となったらしい。確かに自らの手で背中を掻くのは並大抵ではない。
ふと「背」や「背中」の文字を手書きしてみた。掻くではなくて書くである。すると、さまざまな慣用語が思い浮かんできた。曰く背く。背ける。背伸びする。背中合わせ。背に腹は代えられぬ。背を向ける。などなど思い付くままに書き出してみたが、背任の文字に至るまで、余り良い表現が無かったのは意外であった。もっとも私自身の語彙不足かもしれないが、まずまずだったのは、背の君の言葉ぐらいだった事もいささか驚いた。
私は家族から見て、良く言えば堅実。しかし、石橋を叩いても渡らないとも評される。臆病なんだろうかと自問自答もしているが、余命から見て、思い切って舞台から飛び降りる挑戦も必要かと考えている。
自分では新しい事への関心は人並みだと思いながら、板橋区主催の中高年男子のファッションを取り上げた「男のおしゃれの会」への入会は、自分の意思ではなく、ダサい夫への妻の強い願いが発端であった。
それから十余年、今から二年前にエッセイ講座に入門の転機が訪れた。それまでの私は、長年にわたり一ヶ月二十枚ほどの葉書を書く習慣で、仲間内では比較的に名が知られており、書くことについては決して嫌いではなかった。ただ公用文やレポートと異なり、自身の事を記した内容を読み上げて、聞いて頂く自信と勇気が無かったように思う。
ふとしたきっかけで、九月のエッセイ講座の見学に伺った。皆さんの熱心さに感銘を受け、作品集「楽我季第3号」を頂いて帰宅した。妻から早速に感想を求められたが、女性の中に爺様独りは傍迷惑だろうと、辞退するつもりだと述べた。
翌朝、改まった口調で妻が切り出した。
「来月から是非とも入講なさいよ。作品を拝見したら皆さん素晴しい方ばかりのようで、貴方もきっと良い勉強になるわよ。頑張ってごらんなさい」
いつもながら、調子の良い妻の甘言に乗せられ、決心して早や三年が過ぎた。
新しい世界を知り勉強の日々であるが今回も矢張り妻に背中を押されてスタートした次第。月並みの言葉だが何とか頑張り続けたいと思う。スローではあるが研鑽を積みながら精神的なバックボーンも培いたいと願っている。
 
テーマ 「背中」                '
 
 
 
* 八期生浅井伸子さんのご主人です。(HP管理者)
 
 
 
 
 
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