挨拶は心のキャッチボール

浅井 孝郎*
日常生活の中で、特に好きな挨拶言葉は「有難うございます」と「おはようございます」の二つである。
私が満四十年の組織人生活と、その後の十数年の定年後生活を過ごして来て今日あるのは、支えてくれた多くの方々のお蔭と感謝している。まさに、「有難うございます」の一語である。
これまでの人生、実に多くの人たちに出会う機会があった。初めての人、何年も続いている人、うまの合う人、そうでない人、いろいろだったが「有難う」と言って怒った人は誰もいなかった。本当に嬉しい言葉である。
その一方で、私は喜寿を迎えた頃から腰痛が悪化して、畳からベッドへの生活様式の変更を余儀なくされた。二人の子供が独立したため、玄関の両サイドの二部屋を貰い、長男が使用していたベッドのある部屋をそのまま寝室として、長女の部屋を書斎の真似事として使っている。テラス側の南に面した部屋に比べて気温は数度の開きがあるが、やはり時として独り身は快適である。
冷える季節の起床は午前七時にしている。キッチンにいる妻に「お早う」と声を掛けてから洗面に。これは前日の夜に「おやすみ」と言って南北に離れる習慣から生まれた思い掛けない効用であった。永く一緒に暮らしていても、朝晩の挨拶は悪くないなと思うようになった。
特に一日の始まりの朝の挨拶の一言は極めて大切だと思う。ふと昔の在職当時の事が浮かんできた。入社三十年を過ぎて子会社勤務になった頃の私の心境である。親会社に勤務していた時の出世志向から醒めて、平凡ながらも夢と愛を持ち続ける人間として生きようと願うようになった。
新しい第二の職場で、最初に実行しようと心掛けたのは、毎朝、私自身が大きな声で明るく挨拶する事だった。一日の始まりである朝に心からの笑みと言葉で挨拶して、皆さんが出社を楽しいと思って貰えればと、願って努力した十年間であった。以来、当時の仲間たちとの年三回の懇親会が続いている。
高齢自由の身となった現在、毎朝の目覚めで生きている事に感謝して、一日の平和と無事を祈るようになった。今日も行き交う人には心の中で「おはようございます」と声を掛けようと思っている。
テーマ  「朝」
 
 
 
 
 
* 八期生浅井伸子さんのご主人です。(HP管理者)
 
 
 
 
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