嬉しい写真

浅井 孝郎*
首都圏在住の私ども宮崎中学卒業の同期生は、春の総会と、もう一つ、有志による月例の集いを持っている。昭和十九年の入学以来丁度七十年の長い友情が続いている。
厳しかった戦中戦後の苦楽を分かち合い、共に遊び学んで、現在もなお続く友情の輪は本当に素晴らしいと自讃している。
春の総会は今年で四十回を数えているが、今回は、九州関西からの参加者四名を加えて二十名の出席であった。年々少なくなっているのも、高齢化のためかなと現実の厳しさを感じている。
一方、十一名でスタートした第四火曜日の月例会は、私が現職時代の頃からの、二十年を越える古い馴染みの横浜馬車道のピアノ・バーで開いている。正午から三時間の楽しい歓談のひと時である。ママの盛り沢山の手料理と、格安で場所を提供して貰って、この会も十五年が過ぎた。
しかし年月と共に、スタートしたメンバーのうち、二名が他界し、三名が本人もしくは夫人の体調不良で休みがちとなって、最近は六名の小人数となっている。
これでは、わざわざ昼に店を開けて貰っては申し訳ないと、ママの強い引きとめを丁重にお断わりして、この秋から会場を品川のホテルに移した。
十月、お店での最終回の日に、メンバーの奥方や亡き友の家族も参加して貰って、賑やかな宴となった。私の謝辞のなかに七十年に及ぶ友情が続いているとの話を受けて、ママからお礼を兼ねた挨拶があった。
「こちらこそ本当に有難うございました。品川の会には私も参加したいので是非呼んでください。それから皆さん七十年来のお友達とおっしゃってましたが、実は私も昭和十九年生まれ、七十歳になりました」
一同ぽかんとした表情で聞き、やがて気を取り直しての大拍手であった。異口同音に
「ええっ! どう見ても五十歳台後半だよ」
最終日に驚きのハプニングが飛び出した。
イベントには、必ずと言ってよいほど自称カメラマンS君がいる。この日も重たい三脚とカメラを持参して来て、全員を次々にスナップや記念撮影をしてくれた。
十一月下旬、品川での初めての例会当日、S君が先日の写真をそれぞれ数枚ずつ配ってくれた。一同は彼に厚く礼を言って、喜んで持ち帰った。
自分だけは若いつもりでも、写真は出来栄えが良いほど、年齢は正直に写っている。
一服しながら妻に、みんな良く撮れているよと写真を出した。私一人で映っている何枚かを見て、妻が嬉しそうに叫んだ。
「あらっ! お葬式の時の遺影に丁度いいわね。ほんと、どれにしようかしら?」
二〇一五年二月
テーマ 自由題
* 八期生浅井伸子さんのご主人です。(HP管理者)
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