ゴールデンウイークのある日
浅井 孝郎*
今日は五月五日「子供の日」、ゴールデンウイーク最終日である。暦の上では、立夏にあたるらしい。自宅を含む十棟の高層マンションに囲まれた広い緑の中央部に、鯉のぼりが、爽やかな初夏の風に、横一列となって楽しげに泳いでいる。杖を頼りの歩行練習中の私も、近づいて数えてみると十四匹だった。
親子連れお散歩の幼子たちが、嬉しそうに見上げて手を伸ばしている。日本国中では、何匹の鯉が泳いでいるだろうかと、立ち止まって、ふと子供っぽい夢となった。
今年のカレンダーでは、上手く休暇の日を取ると10連休になるとテレビで囃していた。事実、海外旅行、国内ツアーの人出も最高と報じている。一方で熊本、大分地方は、三週以上にも及ぶ強い余震が続き、ボランテイアの人々が大勢支援活動に励んでいると聞く。まさに世は様々である。
古今東西を問わず、人間はゴールドに憧れ「金」が好きである。その為の歴史、物語は枚挙に尽きない。若い頃はゴールドラッシュを背景とした西部劇の画面に熱狂し、金とは異なるがダイヤモンドがテーマだった間貫一、と鴫沢宮が主人公の「金色夜叉」熱海の海岸のシーンに心弾ませたのも懐かしい。
余談ながら中学、高校時代に先生方から
「君のお母さんの名前は宮さんですか?」
と何回聞かれた事か。父の名前が貫一だった故である。それほどの人気だった。
とにかく「金」は、全てにおいて最高位を表し、オリンピックの金メダルを始め、人々の畏敬の対象となっている。私の独身時代からのヒーローだった長嶋茂雄氏の立教大学、巨人軍を通じてのダイナミックなプレーに酔いしれた大衆は、彼を「ゴールデンボーイ」と評した。今も躍動感あふれるユニホーム姿が、脳裏にくっきりと刻まれている。
訪れた事はなかったが、ゴールデンゲートやゴールデンブリッジなど、表現からして、素晴らしい絵を瞼に描かせる。
老いと体調で、専ら自宅で遊ぶゴールデンウイークとなったが、それなりに時を過ごせるのも我が人生の喜びかと思っている。
夕刻に例年の如く菖蒲湯に入れて貰った。そう、今年から体調の都合で受動形の表現である。嬉しさと感謝で気分はまさにゴールデンタイムとなる。おやつに出た柏餅を見て、オーバーながら男子としての本懐、文字通り万々歳を唱えた。
生を受けて八十有余年。昭和初期から平成の現代を生きて来て、わが人生のゴールデンアワーは、そしてまたゴールデンエイジは、何時頃だったかなと振り返ることもある。
ひと言では、言い尽くせない波乱万丈の、凄まじくも面白い、変化に富んだ時代だったなと今も記憶は新しい。
人は皆、気分の持ちようと生き方次第で、自分のゴールデンライフを、築けるのではないだろうか。
秋のシルバーウイークに較べて、数段の華やかさを持つゴールデンウイーク。私なりに小さな窓から覗いた世相は、常に移り変わる新しさを感じる。
好天に恵まれた黄金週間、ゴールドと銘打つ言葉をあれこれ思いつくままに、和製英語を織り混ぜながらペンを走らせてみた。
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* 八期生浅井伸子さんのご主人です。(HP管理者)
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