孫たちの挑戦

浅井 孝郎*
年が明けると、梅か桜かと花の便りを心待ちする私どもであるが、小学六年の二人の孫たちの進学とあって、今年ばかりは、いささか、やきもきさせられた春であった。
藤沢鵠沼に住む長男には女児が一人。これが実に頼もしい限りである。両親が共働きで幼い頃より保育所で育ったためか、強いのなんの、毎々学校からの呼び出しでは、男の子を泣かせて困るので、よく躾けをしてほしいとの六年間であったらしい。
その反面、日頃は甘い父親の言いつけには絶対的であり、資格試験に三年間努力した母親の後ろ姿に、今も尊敬するといった不思議な面を持ち合わせている面白い子である。
勉強は嫌いでサッカー大好き。なでしこジャパンに憧れて、進学もサッカー部のある中学を志したとのこと。幾分楽な気持ちでの結果待ちであった。
長女宅には同じ六年の男児と高校一年になる姉がいる。わが家から二百メートル、同じガーデン内の高層住宅に親子三人で住んでいる。五年前に十年間過ごしたN県から引き揚げる形で移って来た。長女も冬の日本海の厳しい風雪に耐えて頑張ってきたが、体調その他の事情で東京の生活となった。
二代目開業医の婿殿には、不便を掛けて申し訳ないと思いながら、逆単身の形で毎月二、三回の東京への帰宅を楽しんで貰もらっている。教育のために転宅したという大義名分からも、今回の受験は、長女母子にとって、かなりのプレッシャーが有ったのではないだろうか。
今どきの子供たちは放課後、塾通いが当たり前の日課のようである。低学年の頃から週三回、高学年ともなればその日数は倍加し、夏休み冬休みも返上の特訓とのこと、母子一体となっての取り組みのように見受けた。
孫が通学している最寄の区立小学校は、多くの越境通学を見受けるほど評判が良く、児童相互の交友も和やかで安心している。しかし過半数の児童が異なる私立中学に進学している現実には、将来、小学校の同窓会はどうなるのか、同窓会至上主義の私にとって大きな心配である。
二月一日から五日まで入試の日が続いた。ラッシュ時の朝に同伴する長女に
「スタミナのつく夕食を作って上げようか」
と家内が声を掛けた。しかし受験マニュアルどおりの
「夜は胃に負担を掛けない炭水化物で軽く済ませるから」
と言う返事に、成程と合点したものの、少しばかり寂しいようであった。
一喜一憂の数日が終わった。藤沢から驚くほどおませな声になった孫から電話を受け、横浜中華街での再会を約束した。かたや三勝一敗の成績を戦った板橋の孫は表情が一変し、子供らしい笑顔を見せるようになった。
分相応の結果を一緒に喜び合いながら、この努力が良い体験となって次に繋がるようにと願い、文字通りの春の訪れを祈っている。
 
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* 八期生浅井伸子さんのご主人です。(HP管理者)
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孫達の挑戦について
野村 昌平**
私にも独り息子が居る 孫2人だ
東京住まいなので進学は私立が傾向なのは仕方が無いのかも知れない
上の娘は鳶が鷹を生むで中学受験は向かう所敵無し、首尾良くトコロテンで大学まで進める学校に進み今は高等部の一年生で医者を夢見ている
下の男の子は控え目、お人好しで姉に続かず今年自分が選択した私立中学の一年生となった
進学に「じいじ」が出張るのは行き過ぎだろう 親も居る事だし口出しは慎むべきだろう
どんな将来に進むのだろうか 親は子の意見を聴きその上で長年見て来た子の性格などから適当なアドバイスをして遣らなければならない 経験は全ての理に優ると云うから
浅井さんの気持ちを拝見しながら考えさせられた
(2014/5/14 21:00)
** 浅井孝郎氏の宮崎大宮高校の同期生の方です。(HP管理者)