シルバーパス有難う

浅井 孝郎*
若い人はあまり関心が無いと思うが、東京都在住の七十歳以上の高齢者には申請に基づいてシルバーパスが交付されている。
利用出来る運行系統は都営地下鉄四路線。都電と都バス。その他、約三十社のバス路線である。使い方如何では、都内を隈なく訪れる事が出来る優れものと言えよう。
ただ個々人の住所によっては利用価値は若干異なるかと思われる。例えば私の住む板橋区では、東武東上線と都営三田線それぞれの沿線在住者の差は大きい。
私の場合は住まいが三田線の駅に近く、目の前にあるバス停のお蔭で、本当に助かっている。交通機関と併せて心からシルバーパス有難うと感謝の気持ちである。
求めるのは毎年九月更新で十月からの一年間利用となっている。料金は納税額によって年額千円若しくは二萬五百十円の二通りとなっている。       
初めは少し高いかなと、さもしい考えもあったが、二年間、自分の交通費を記帳して見て本当に驚いた。なんと月平均の利用金額が一万五千円以上になっていたのである。
この三年、私は体調的に専らお昼間の動きとなっていたが、このパスを持つたことで外出意欲は旧来に倍して旺盛となった。それにしても黄門様よろしくお見せするだけで乗車出来るのは、感覚的にタダ乗りではと勘違いするほどで、改札口や運転手に挨拶や会釈をしている老人をしばしば見かけている。
先日、東京都福祉保険局に尋ねたところ、このシルバーパスは昭和四十九年十一月に都の敬老制度として発足し、同五十四年十月から所得制限を設け今日に至っているとの話であった。
これは高齢者が外出に前向きになる生活習慣を通じて、より積極的な社会参加を促進するために都の支援のもと、社団法人東京バス協会が実施している制度であるらしい。
尚、財源は都税から百五十億円の補助を受けて約八十四万人が利用している現状とお聞きしている。
私自身、七十歳になったら是非にと熱願していた夢である。単純かも知れないが、パスを手にしてからは、連日のように飛び廻っている。もしも晴れた日にじっとして居ようものなら、わが家の山の神は、夫の健康のためと称し、自身の鬱陶しさ解消を兼ねて、盛んに外出を勧めてくる。
友人の一人に地下鉄とバスの路線図を片手に都内探訪のプランを練って楽しんでいる御仁がおられる。私はそれほど緻密ではないが気楽に外出する喜びを実感しては、一部自己負担を忘れて感謝している日々である。ただ皆さん高齢でもあるためか、年間一万二千件もの紛失届けがあるとか。自戒を含めて気を付けたいものである。重ねて感謝。有難う。
 
 
 
* 八期生浅井伸子さんのご主人です。(HP管理者)
 
 
 
 
 
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