老友に有難う

浅井 孝郎*
最近失敗することが、多くなったような気がしてならない。歳のせいで、せっかちになってきたのかも知れない。お恥ずかしい限りである。
日々ことさらに記憶力の低下が進んできたようで困っている。年齢、健康など時の流れだろうか。それでも、まだ多くの学友、社友と近隣の友に恵まれて、嬉しさと感謝の気持ちでいっぱいである。四つほどのグループに恵まれているが、喜びを込めて、そのうちの一つを書いてみよう。
身近な集まりのなかに、毎月の第三水曜日に最寄りのファミレス・ロイヤルホストでの昼食会がある。十一時から板橋区在住の五名で開いている。その諸兄を紹介しよう。
前野町在住のI氏、地元で民生委員などの世話役を兼ねた八十五歳。月々の図書購入が一番の趣味で、積ん読くのたぐいと、本人は謙遜し、歳を感じさせない若さを保つ。
上板橋町に住む八十三歳のD氏。極めて進歩的な思想の持ち主で、各会合に出席して弁を闘わす論客。三年前より独り身となったが月に三回の寄席に通い頑張っている。 
次にこれも一方の論客H氏、練馬駅近くのマンションに住む八十二歳。出身は四国香川で、二、三の企業経営を経て、現在の居を構える。囲碁五段、図書館通いが趣味である。
四人目は地元出身の大山町に住むS氏七十五歳である。この会のお世話を十五年以上も願っている。趣味の読書、パソコンを楽しみ各選挙の都度、区のお世話も務めている。
この板橋在住の四名の友とは、二十年近いお付き合いとなる。その昔、典型的な社用族として転勤続きだった私だが、ようやく六十歳を過ぎてこの板橋に落ち着いて、地元の人たちと知遇を得るきっかけがあった。
実は二十年ほど前、板橋区の区報に『五十歳以上の男性を対象とした、男のおしゃれの会』の催しを開く案内があった。期間六か月で、在住の定年近い男性のための、文字通り「おしゃれとファッション」を考えようと、区の企画としては誠に粋な計らいだった。
希望者も多く、抽選で五十名が選ばれて、開講となった。そして十名づつ各自の雰囲気に似合った色分けをされてチームをつくり、近隣の大学教授、資生堂などから講師を招いて毎月楽しい勉強会となった。私は黄色組に編入となった。秋の修了式では、参加者それぞれが、自分の衣裳を考える宿題を与えられてのフアッションショーであった。参加者の意識が大きく変貌したのは勿論だった。
終了後も会の存続を希望する声が多く、およそ二十名ほどが、同じ社会勤労者会館で、毎月一回テーマを決めて、自主的な勉強会を開くことになった。
会長、書記などの役割も互選で決めて和やかなスタートを見た。初めての会長は元大手銀行の役員を勤めた方で、趣味も多く絵画展も毎年開かれ、つど私たちも招かれていた。その他多くの素晴らしい方々の意見を拝聴して、あつと言う間に、充実した楽しい十数年が過ぎた。しかし、その間に何人かの方々が逝かれたのは寂しいことである。
現在、今も気の合う四名の方が私のため、最寄りの場所で、月一度の昼食会を持って頂き感謝に堪えない。集まれば相も変わらず、口角泡を飛ばしての侃々諤々の青春像を見せてくれるから面白い。
毎々どれだけ励まされているか計り知れないものがある。うち一名はタクシーで、別の一名は徒歩で往復を、参加している。あとの二人は終了後に、私をマンションまで送ってくれる配慮まで貰っている。本人たちの往復は、きっと自転車に違いない。
この年齢になっての友情、気配りに心からの感謝である。
テーマ 自由題
* 八期生浅井伸子さんのご主人です。(HP管理者)
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