楽しかった日々を有難う

浅井 孝郎*
去る六月四日から、私は前野町の老人保健施設のプリムローズで、三泊四日のショートステイにお世話になった。昨年の秋に続いて二度目だった。
家内が旅行で、留守をするためである。昨秋は、六十回目の高校同期会で佐賀に帰郷した。今回は、年四回ほど参加している板橋区常盤台商店街のゴルフコンペが、百回記念として、箱根カントリークラブで開催されることになり、宿泊を兼ねて参加することになったからである。
実は三年半ほど前から、私が歩行困難となって「要介護2」のため、施設の一階にあるデーサービスに、火曜と土曜の週二回お世話になっている。歩行訓練だけでなく、新しい仲間と出会えて本当に嬉しい。
今回もお願いして四日間のショートステイとなり、初日は二時頃、施設の車が親切に迎えに来てくれた。
担当者から笑顔の応対を受けて、三階の個室に案内された。広いベッド、整理タンス、洋服タンス、椅子とテーブルが備わり、カーテンのついた落ち着いた洗面所がある。念のためにと枕元に簡易トイレも置いて貰った。老人の入るワンルームとしては、立派に整備されている。
身づくろいをして間もなく、午後三時から一階談話室に案内され、当日定例参加している皆さんの懇談中を抜けて、会議室ホールのベッドで、初日の整体を受けた。杖を頼りの歩行練習も終え、四十分後に再度案内されて三階に戻った。
夕方五時半に、十二卓五十人ほどの食堂のテーブル席に導かれた。三人の婦人と相席となり、いずれも八十歳前後とお見受けした。皆さん、ショートステイで一か月サイクルの宿泊中のため、会話は少なかったが、寂しくはなく、ほっとした気分だった。
最初の一汁二菜の夕食を終えて、部屋での洗面等を済ませ、初日の報告がてらに、家内にメールを入れた。齢の所為か寝つきが悪く幾分苦労もしたが、トイレも三回ほどで済んで、何とか朝を迎えた。
翌五日は七時半の朝食となった。五十人近い賑やかな雰囲気だった。各人のテーブルに二本の蒸しタオルが並んでいる。そんな気遣いも嬉しかった。前もって朝はパン食をお願いしておいた。自宅と少しでも同じようにとの思いである。
部屋に戻って間もなく、清掃担当者の来室を受けた。邪魔にならぬように室外で十分ほど待った。連絡を受け部屋に入ると、机上、洗面台の整理はじめ、床の清掃などすっかり清潔になった事に驚いて、心も洗われた気分になり嬉しかった。
十時過ぎに、一階デーサービス責任者の、山元さんの優しい案内を受け、火曜日の例会の仲間たちと懇談となった。一階ホールでのお茶会である。
再び三階に戻って、皆さんとの昼食を終えた時、隣テーブルの高野氏から、ぜひにとの誘いで、将棋挑戦の声が掛かった。駒を見るのは何十年振りだろう?。一階からカラオケのお呼びもあったが、心は二つ、身は一つの止む無しで、三階に残っての対戦は私の三勝一敗の結果となった。
夕刻は三人の婆様たちとの食事を済ませ、お蔭様で一日を終えて、ホッと落ち着いた。
六日、朝食後の九時過ぎに、早い入浴となった。一人ずつが案内されての応対である。「有難いこと」と感謝のひと時だった。私の湯上りを待ち構えていたかのように、棋仇の高野さんが棋盤を抱えていた。今回は、私の残念な結果となったが、彼も私同様、きっと新しい仲間の誕生を、喜んでいると思う。
午後に一階のホールで、二度目のリハビリを受け、夕方三時から三階の十数名と楽譜を  手にする合唱に参加した。みんなで大きな声を出すことに意味があり、毎日午後に三十分ほどの発声練習がされていると聞いた。その後でテーブルの皆さんと、おやつを美味しく頂戴した。
夕刻になって、早や担当者が明日の帰宅のため荷造りの準備に来室した。勝手なもので「もう少しここに」という気持ちとなって、独り苦笑してしまった。
夕食後、テーブル席の三人に、明日の別れを挨拶して「これからのご健勝を」申し上げた。いつになっても別れは寂しいものだ。
当日の朝となり、九時頃に身支度を済ませて、再度荷造りのチェックを受けた。担当者の清掃が終えて室内を見回すと、こみ上げてくる名残り惜しさが湧いてきて、柄にもなくセンチな気分となった。
四日間お世話になった施設の方々の、素晴らしい笑顔に、心から感謝の気持ちである。
* 八期生浅井伸子さんのご主人です。(HP管理者)
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