新国立競技場について
三井所清典
新国立競技場の基本計画案がようやく決まりました。
まずは工事予算1490億円、竣工が19年11月末、高さ50メートル以下という基本的な計画が無難に納まり、
多くの国民とともに正直ホッとしているところです。
A案か、はたまたB案かと数日は落ち着かない日が続きました。
それでも2案が提出されて最低の競争性が確保されて良かったと思いました。1案だけでしたら国はとんだ恥をかくところでした。
遠藤大臣に要望した翌日、大手5社をまわって大臣に渡した同じ資料を渡しながら、
応募されるなら一度は木造屋根の検討をして欲しいと依頼しました。その時の反応では大成建設と竹中工務店は意欲を感じました。
スタンドの検討をしていた大成建設は有利でしたが、他の大手建設会社はマイナスのハンデイキャップのある中でよくぞ立ち上がったと思いました。
スタジアムのデザインですが昭和39年の日本が国威高揚やインフラ整備の必要性が強く求められていた時代とは異なり、
気分は元のスタジアムを壊さず仮設スタンドと仮設の屋根でも良かったのではと思う程で、成熟国のオリンピック施設とはどんなものかを考える時期だと思います。
北京のスタジアムのようにびっくりする施設は全く不要と思っています。
ご承知のように、私は8月に木造屋根も成立するので募集要項で木造屋根を排除しないようにと遠藤五輪担当大臣に要望していましたので、A
案になって欲しいと思っていました。木造屋根ののオリンピックスタジアムがまだ世界になく、日本で初めて実現することは素晴らしいと思います。ただし、
B案が洗練された見栄えでしたので審査委員会でどう判断されるか不安でした。
ただ、鳥瞰でみて魅力的なB案の屋根の内側の透明の屋根にはリアリテイが薄いと感じています。現実感がないほど軽やかに表現されていましたので。
また、B案の木造の列柱は象徴的で私はシンケルというドイツの建築家が設計したナチス時代のベルリンオリンピックスタジアムを思い出してしまいました。
B案の柱の周りがコンクリートのスタンドの外側で象徴的な木造の柱がどう見えるか、現実に側に立った気持ちでイメージしてみましたが、
あまりしっくりした感じはしませんでした。唐突感とかわざとらしさを覚えると思います。
スタジアムに近ずけば近ずくほどB案には寂寥感を、A案には親しみとか落ち着きを感じるのではないかと思います。
スタンドのつくりはアスリートと観衆の一体感、スタンドからの競技者の死角の少ないA案がいいと思います。
A案のスタンドの裏に木の垂木のような化粧材が取り付けてありますが、実際の設計で材の大きさや間隔を検討し、色使いを含めもっと洗練させることが必要です。
詳細な提案内容を知らない現在あまり突っ込んだ意見は言えませんが、審査委員7人のうち建築の専門家の6人はよく知っている人ですので、
そのうちどこをどう評価したか聞いてみたいと思っています。
とりあえず、今晩はここまでにします。
工事費や工期は提案通り守れるかという質問が聞こえてくるように感じますが、急激な物価変動や震災などの特別な事情が発生しない限り、
実施者のプライドにかけて遵守されると確信しています。
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