「無人機 乗っ取りを防げ」を読んで
石井俊雄
今朝の朝日新聞に、「米軍の無人偵察 本格化」の文字が躍っていた。
中身的には、
とある。
詳しいことは、新聞を見れば分かるので、これ以上書かないが、
折しも、「日経サイエンス」3月号に、「無人機 乗っ取りを防げ」という記事を発見し、一読したが、
内容は、無人機の通信セキュリティ問題をピックアップしたものだった。
米連邦航空局(FAA)が無人機にどう向き合っているかなど紹介しているが、
米国で起こることは、若干の時間差でわが国でも起こることであろうから、
関心をもって要点をピックアップしてみた。
- 無人機の将来性
米連邦航空局(FAA)は、2020年に1万機の無人機が米国の空を飛ぶようになると予測している。
無人機の利用は必然だと言える。パイロットが要らず人間を収容するコックピットや客室も不要なので、
経費を格段に節約できる。
例えば、電力会社の場合、送電線の検査のために、有人機1機をチャーターする費用で、
無人機システム一式を購入し、同じ電力網検査作業を何年も実施できるだろう。
米国有数の大企業であるフェデックスも、自社保有の多数の貨物機を無人機に置き換える計画に言及している。
目的地まで30分以内で購入品を配達する無人機導入を米アマゾンが検討しているという話もある。
その他、救援活動や農薬散布、原発事故対など、さまざまな用途に使われる可能性がある。
- 無人機の安全性
米議会も商用無人機時代の到来は避けられないと認識し始めた。
FAA近代化改革法」を2012年に可決したのに合わせ、
FAAに対して「民間無人機を全米の航空システムに安全に組み入れることを加速する包括的な計画」
を2015年までに策定するよう命じた。
しかし、あいにく、無人機を管理する規制の仕組みを整えるのは容易ではない。
無人機は基本的には遠隔制御ロボットだ。
多数の無人機が空を飛び回るとなると、現在のFAAでは対処しきれないような付記雑な安全問題が生じてくる。
として、大きく2つの問題点を指摘している。
- 問題点
- 通信リンクが生命線
なかでも最大の難問は無人機の無線リンクのセキュリティーだ。
無人機の飛行には
3種類の通信リンクが必要となる。
- @GPS(全地球測位システム)衛星からの航法信号
- A自分の存在を他機に通知する信号
- B無人機を操縦する地上との双方向リンク
の3つだ。
どれか1つが乱されただけでも惨事を招く可能性がある。
さらに、これらリンクのセキュリティーを確保する技術的方法がまだ不明な場合がある。
GPSは無人機の航法システムの要であり、慣性誘導センサーや磁気計、高度計、カメラなどを補完している。
GPS受信機は他の機器と違ってどんな気象条件でもピンポイントの精度を維持できるので、
この航法システムで最も重要な装置だ。
民生用GPSは軍用と違って自由に利用可能で、暗号化されていない。
スマートフォンにもスポーツウォッチにも等しく電波は届けられ、大変広く普及しているが、
認証制度を欠いていることが危険な弱点となる。
正規の信号を偽の信号に入れ替える「スプーフィング」("spoofing" : なりすまし)が簡単に可能なのだ。
GPS頼りの無人機にとっての脅威はスプーフィングにとどまらない。航法信号の受信妨害も驚くほど簡単にできる。
無人機が安全に空を飛ぶには、スプーフィングと妨害に強いセキュリティー保護された航法システムが不可欠だろう。
- 衝突を回避する技術
小さな無人機にとって、他機の進路を邪魔しないようにすることは特に困難だ。
既存のレーダーはかさばる上に消費電力も大きく、無人機には積載できない。
結局のところ、解決策の1つは「放送型自動従属監視(ADS−B)システム」の利用となりそうだ。
ADS−Bのトランスポンダは自機の位置と速度を常時送信し、近くの他機から同種の情報を受信する。
FAAは航空交通システムの大改修の一環として2020年までに、
大小問わずすべての航空機にADS−Bトランスポンダの装備を求める予定だ。
だが
ADS−Bには民生用GPSと同様、重大なアキレス腱がある。
信号に認証が与えられていないため、偽装が可能なのだ。
FAAは偽装ADS−B信号に
「マルチラテレーション」
という技術で対抗しようと考えている。
だがその実現性は不透明だ。
無人機はオペレーターと機体を結ぶ「指令制御リンク」によって制御されており、
このリンクは一見したところGPSやADS−Bよりもセキュリティー上の問題が少ないように思える。
それでも、信号を遮断することは可能だ。
- 技術以外にも問題山積
FAAは規制策定にあたって、
市民の安全と無人機技術の経済的利益をバランスさせるという困難な問題に迫られるだろう。
プライバシーの問題も引き起こす。
高解像度カメラを装備し一般家庭を覗き込める機体について規制を求められるだろう。
無人機の脆弱性は、機長と副操縦士がコックピットに座る航空機が長年抱えてきた問題点とよく似ている。
有人飛行機はハイジャックされる恐れがあり、通信リンクは妨害される恐れがある。
それでも私たちは飛行機に乗り続けている。利便性の方が上回っているからだ。
無人機についても同様の妥協が求められるだろう。
以上、「日経サイエンス」3月号の、「無人機 乗っ取りを防げ」という記事からの抜粋だ。
端的に云えば、上の日経サイエンスの記事は、
- 今後、無人機は増える。
- 無人機の生命線は、次の2つの技術だ。
- @飛行のための通信リンクの確保
- A衝突回避のための航空交通システムの構築
- 上の@、Aにはセキュリティの脆弱性がある。
- その脆弱性は、
- @なりすまし "spoofing"
- A通信妨害、遮断
- 脆弱性を正す方法は、
- @暗号化通信技術
- Aセキュリティー保護された航法システム
となる。
小生、思うに、最近の自動車では、自動運転技術が開発中。
IT(情報技術)産業の技術革新をけん引してきた米グーグルが自動車業界に急接近している。
ホンダや米ゼネラル・モーターズ(GM)など車大手4社と車内情報システムを共同開発すると発表。
究極の安全技術とされる自動運転でも影響力を増している。
自動車各社が公道で自動運転車の走行実験を始めた。
「究極の安全運転」が実現すれば、運転に自信のない高齢者らには力強い味方になるだろう。
でも、ここでも、セキュリティの確保は最重要課題だ。
ここでも、暗号化、必要不可欠だろう。
孫どもの世代が活躍する頃は、もはや、インテリジェンスにまみれているだろう。
小生たちの経験・知識が及ばない世界が待っている。
変なボタン押したら、火葬場に着いたりするかも。
話を、朝日新聞の報じる軍用無人機に戻すと、
「日経サイエンス」3月号の、「無人機 乗っ取りを防げ」という記事、原題は、"Hacking Drones"とある。
"Drones"は、英語で雄のハチを指す語句。転じて不活発な活動体や自動操縦される無人の飛行体や車両、
ハチの発するような音などを指す。
無人航空機は、人が搭乗していない航空機のこと。単に無人機とも呼ばれる。
軍用無人機では、GPS衛星通信など、軍用の衛星通信は暗号化されているので、民間のとは違い、
セキュリティのレベルは高い、と思われる。
だから、セキュリティに関しては、商用無人機ほど心配は要らないだろう。
なお、機体については、ネットで調べると、次のような記事があった。
ご参考までに、書いて置くので、よかったらご覧ください。
-
RQ-4 グローバルホーク (RQ-4 Global Hawk)は、ノースロップ・グラマン社によって開発された無人航空機。
アメリカ空軍などによって使用されており、イラク戦争で実戦に投入されている。
MQ-1プレデターなどの無人航空機とは異なり、攻撃能力を持たない純粋な偵察機である。
2011年3月11日に発生した福島第一原子力発電所事故の際には、被害状況の把握の為、施設上空を短時間飛行した。
アメリカ空軍で使用されている。2001年のアフガニスタン侵攻で行動した。
-
RQ-1 プレデター(Predator, 英語で捕食者、略奪者の意)はジェネラル・アトミックス社製の無人航空機(UAV)。
アメリカ空軍では中高度長時間滞空 (MALE)無人機システムに分類されている。
主な任務は偵察やヘルファイアミサイルによる対地攻撃(武装型のMQ-1のみ)で、
1995年の配備以降ボスニア(セルビア)、アフガニスタン、パキスタン、イラク、
およびイエメンで作戦に参加している。
-
MQ-9 リーパー(Reaper:英語で刈り手(刈取機)、
死神などの意)はジェネラル・アトミックス社製の軍用無人航空機。
長い航続距離と高い監視能力および攻撃能力を持つハンターキラー無人機であり、
原型となったMQ-1 プレデターよりも機体が大型化され、性能が大幅に向上している。
現在、アメリカ空軍、アメリカ国土安全保障省、NASA等で運用されている。
最後に、無人機に対するアメリカの着眼の鋭さに、感心する。
わが国、大丈夫かな?
先日、図書館で、新刊書の棚にあった「海軍反省会(6)」をパラパラと拾い読みしたら、
中に、こんな発言が書かれていた。「海軍は、艦隊決戦に拘り過ぎた!」と反省の弁が記されていた。
本当に、頭、固いのだよね。それが心配だ。・・・目先しか見ない連中だから。
今も、変わっていないのではないだろうか。
組織的なインテリジェンスのセンスが無いのが欠陥だ。
今でも、兵数、大砲の数、など数合わせで、満足しているのかな。
ここまで考えると、陳瞬臣さんがその著作「日本的中国的」で書いたことがおもいだされる。
「隣に中国という議論好きで、しかも記録好きの国があり、ありとあらゆることを記述した書物を日本に流し込んだ。
学習用トラの巻を渡されたたので、問題に出会っても、すぐ解答を見ることができた。
あれこれ考えることや、段階的理論の組み立ては、からごごろとして軽くいなし、それよりも、
もっぱら情緒に磨きをかけることを心がけたのではあるまいか。」
・・・
「事実より先に知識が存在したのは、良かったか悪かったか。
幕末に魏源の『海国図志』など、阿片戦争関係の文書が、 唐船によって長崎にもたらされたが、
これは西洋の侵略という事実の起こる前に、それについての知識が与えられたのだから、
大そう幸福なケースといえる。」
・・・
「こんな風に、政治面では、やはり先取りが望ましい。
だが、精神面についていえば、あらかじめパターンをつきつけられると、かえってまずいのではあるまいか。
オリジナリティが特に尊重されるジャンルでは、パターン、ことに強烈なパターンの存在は、
迷惑千万というほかはない。」
なんのことはない、今も同じことをやっている。
かつての中国が今はアメリカに変わっただけ。
自らの思考を放棄し、他者のアイディアに依存する、という伝統は脈々と生きているようだ。
現在、わが国では、パイロット不足で、LCCなどが運行本数を減らして対応している。
でも、後、10〜20年もすると、無人機の運用が始まるのではないだろうか。
先ず、貨物便から入って、20年もたったころは、旅客用無人機が飛ぶだろう。
その場合は、多分、有人機を選ぶか、それとも格安で無人機を選ぶか、の、オプションが付くだろう。
無人機では、パイロットは乗ってなくとも、保安員は乗るだろう。テロ対と事故対のためだ。
そのころには、地上では、無人自動車が巾を利かしていると思う。
でも、陸と空、この2つの空間を考えるとき、地上は2次元の世界、空は3次元の世界。
衝突防止技術が鍵かもしれない。何故なら、空では、停まる、というオプションが無いからだ。
万一のときは、乗員全員を瞬時に機外に放出する脱出シューターが装備されるかも。
兎に角、この面の研究、創めた方がいいだろう。
何故なら、間違いなく、ロボット化は進むのだから。
私的には、死ぬまでに、無人機に乗ってみたい。サドンデスを期待して、ではなく、スリルを味わうために。
多分、宇宙旅行より、面白いと思う。何故なら、宇宙旅行って、箱の中にいるだけで、
自然を肌で感じることは出来ないだろうし、循環したろ過水は飲みたくないからだ。たとえ自分のでも。(この段追加 2014/5/26)
もう少し追加しよう。
それは、日本語と英語の違いについてだ。
本文の中で、
「いままで、無人機の話をしてきたが、原題は、"Hacking Drones"とある。
"Drones" は、英語で雄のハチを指す語句。転じて不活発な活動体や自動操縦される無人の飛行体や車両、
ハチの発するような音などを指す。」
とある。
ここで、面白いよね。
日本語では、漢字を三つ組み立てて「無人機」。
一方、英語は、人類誕生以来慣れ親しんできた自然物であるハチからの連想で、"Drones" とやった。
ここに、英語と日本語の単語製作上の相違を見つけ出すことが出来る。
ま、全てとは云わないが、大勢としては、大きな相違点だと思われる。
4月初めころの朝日新聞の書評欄で、「驚くべき日本語」(ロジャー・パルバース著)が採り上げられていた。
早速、買ってきて読んでみた。本を買うというのは、1年ぶりのこと、それだけ関心があるともいえるが、
実際は、面倒くさくて、なかなか買わない。高価だし、図書館だとタダだし。
ま、その点、この本は、書店で店員に訊いたら、直ぐ取り出してくれた。
そうなったら、もう、買わなければならない。そんな経緯もあったが、兎に角、関心を以って読んだ次第だ。
中身的には、大したことは書いてなかったが、ネイティブ・英語・スピーカーがどのように日本語を見ているか、
そんなことがわかった。読んだ甲斐はあったのだ。
その中の著者の主張で、今回のことに絡むのではないかとの一節を思い出したので、書いてみる。
日本語は、言語学の専門用語で、「膠着性」をもった言語だといわれます。
この「膠着性」という難しそうな言葉は、もともとラテン語を語源とした英語、"agglutinative" を日本語訳したものですが、
この英単語の成り立ちを見てみると、"glue" = 「くっつける、糊」という意味の言葉であることから、
「何かにくっつく、一緒になる」というニュアンスを連想できるでしょう。
つまり、「日本語は膠着性をもった言語である」とは、具体的には、ある言葉の前、真ん中、
後ろに新たな別のかなを「くっつける」ことで、
その言葉の意味を実に簡単に変えることが出来る言語であるということです。
ここに、英語などには見られない、日本語の驚くべき柔軟性の本質があります。
・・・
柔軟性のある日本語は他言語ほどの語彙を必要としない。
・・・
語尾を変化させるだけで変幻自在な、日本語のこの種の柔軟性は、
英語のような言語とくらべると実に驚くべきものです。
・・・
こういった柔軟性は、日本語が膠着性言語であるからこそ可能になります。
・・・
日本語には、世界共通語となっている英語ほどに、単なる語彙がそれほどたくさん必要ではないのです。
何故なら驚くばかりの柔軟性で、もともと一つの言葉からのバリエーションで、
別のまったく新しい意味の言葉がどんどん自在に作られていくからです。
・・・
しかし、英語の場合は、たくさんの語彙をもっていないと、
これらの多様な日本語に対応する表現を見つけることが非常に難しいのです。
英語を習得するときの難しさの半分は、まさに語彙の獲得にあります。
著者は、1944年アメリカ生まれ、作家/劇作家/演出家、とある。
ハーバード大学大学院ロシア地域研究所で修士号を取得、とある。
小生、思うに、日本語の語彙は、膠着性に由来するところと、漢字組み立てに由来するところと、あると思う。
著者は、流石に、漢字組み立てについては言及してないが、膠着性由来に着目することで、
日本語と英語の語彙の数の差を説明している。
この本で明らかになったことは、英語の語彙が日本語よりかなり多いということ。
更に、この雑誌の記事から、その英語の語彙が、自然物からの連想、ラテン語の影響、
で形成されたらしいことが分かるということだろう。(この段追加 2014/5/27)
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- アップデート:26/5/25 [Return]
- アップデート:26/5/26 追記
- アップデート:26/5/27 追記