ホモ・デウス

石井ト
  1. はじめに
    12月27日(金)のNHKBs1の夜8時から10時、「衝撃の書が語る人類の未来〜サピエンス全史」という番組をやっていた。
    初めは見ると無く見ていたが、段々面白くなり、9時のニュースを挟んで後編が始まった時点で、録画した。
    内容は、ユヴァル・ノア・ハラリ という歴史学者へのインタビューを挟んで、著書の解説という形のものだが、 番組の題名にあるように衝撃の内容だった。
    ユヴァル・ノア・ハラリという歴史学者についてウイキペディアから引用するとつぎの通りだ。
    ユヴァル・ノア・ハラリ (英:Yuval Noah Harari、1976年2月24日 - )は、イスラエルの歴史学者。 ヘブライ大学歴史学部の終身雇用教授。世界的ベストセラー『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』、 『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』の著者。著書では自由意志、意識、知能について検証している。
    このように優秀な人の書いた本、知らないでは勿体無いので、紹介の記事を掲載する。こんな本もあるよ!というわけだ。 所感など寄せていただければ、嬉しい。 既に、Bs1のテレビを見たり、本を読んだりされた方が居られれば、余計なお世話だが、ご勘弁を。
    私はと言えば、こんな本があること全く知らなかったので、読もうと思い、一昨日、図書館に本の予約を入れたところだ。 ・・・ゲットできたら読んでみるつもり。 楽しみにしている。何故なら、相当優秀な人のようだから。小生は頭のいい人が見つけた発見が知りたい。 大元はアインシュタインだが、彼と比べてどうだろう。 若し、同じ程度なら、歴史学ではなく物理学に挑戦させたらどんなだっただろうと思う。 その方が人類にとってハッピーだったかも知れないから。
    我々にとって「ホモ・・・」で馴染みの言葉は「ホモ・サピエンス」だが、それは賢い人という意味だ。 だが、題名の「ホモ・デウス」はどういう意味だろう。ウイキペディアに拠ると、次の通りだ。
    デウス(deus, Deus)は、ラテン語(およびポルトガル語・カタルーニャ語・ガリシア語)で神を表す言葉。 インド・ヨーロッパ祖語の dy?us 「天空、輝き」に由来する。dy?us (ディヤウス)はプロト・インド・ヨーロッパ人の多神教の最高神であり、 ギリシア語のゼウスやラテン語のdeus、の語源となった。
    従って、「ホモ・デウス」は神の人という意味になる。
    そのような本を書いたユヴァル・ノア・ハラリ氏の紹介番組から、その主張や解説文をピックアップしてお伝えしよう。 暇つぶしには持って来いだと思うから。
  2. イントロ
    • 格差
      何もしなければ、人類が超エリート人間の小集団と、経済的、政治的力を全く持たない巨大な底辺層の役に立たない人間とに区分され、 新しい”無用者階級”となるのです。
    • 人類が今後数十年直面する新たな課題
      AIやバイオテクノロジーは、古代神話にのみ与えられていた能力を我々に与えています。 これは人類史上最大の革命であるだけでは40億年前に生命が誕生して以来大変革になるのです。
  3. 「Homo Deus」から抜粋
    • 歴史を学ぶ意味
      歴史を学ぶことの意味は、自分たちが過去にとらわれないようにするためです。 「昔の人と同じようにやろう」というのはあまり意味がありません。100年前のやり方は通用するはずがないのです。 私たちの未来を正しく考えるために、過去について人々が語ってきたことが本当なのかフィクションなのか見極めることが大事なのです。
    • 生命工学
      生命工学者は古いサピエンスの体に手を加え、意図的に遺伝子コードを書き換え、完全に新しい手足を生えさせることすらするだろう。
      • 実例:ゲノム編集赤ちゃん誕生事件
        ここで、2年ほど前に起こった南方科技大学賀準教授のゲノム編集赤ちゃん誕生事件が紹介された。
      • 実例:サイヤジン社(中国)の技術
        多くの生物の遺伝情報の書き換え賀可能になっています。そこには人間も含まれます。
      • J.クレイグ・ベンター研究所(米国)
        生命維持に最低限必要な遺伝情報だけを持つ細胞「ミニマル・セル」を完成させました。 遺伝子コードを設計するときには1文字の間違いも許されません。100万字の内たった1文字間違っても生み出せない生命を我々は生み出したのです。
    • 神になる道
      裕福な人々は自分や子供をより知的で才能をもつように設計できるようになります。 格差は一度広がると元に戻すことは大変難しいのです。 どうやって体や脳を作るかが分れば、責任が重く巨大な力を持て余す神かもしれません。 私たちは今まさに神になる道を歩んでいるのです。
  4. 「機械と融合し能力を拡張する」から抜粋
    • 機械との融合
      これまでのところ、人間の力の増大は主に、外界の道具のアップグレードに頼ってきた。 だが将来は、人の心と体のアップグレード、あるいは、道具との直接の一体化にもっと依存するようになるかもしれない。
    • マイクロICチップ
      キャッシュカードをチップ化し体に埋め込む例が紹介された。
    • 脳とコンピューターの接続:
      脳とコンピューターのつなぎ方を学んだ人類は、遠隔操作できる機械の手をもつ可能性もあります。 脳に機械の手をつなぐ方法を一度学べば、体に接続している必要はありません。人と会ってる間、機械の手は家で皿を洗っているかもしれません。
    • 国防高等研究計画局(DARPA)
      「バイオネクスト」が紹介された。
      • 実例:脳にICチップを埋め込む技術の実用例が紹介された。
      • 実例:パラドロミクス社のブレイン・マシン・インターフェースが紹介された。これは、脳神経の活動を記録できるとのこと。
    • ホモ・サピエンスをホモ・デウスへアップグレード
      創造と破壊を行う神のような力を獲得し、ホモ・サピエンスをホモ・デウスへとアップグレードするものになるだろう。 人間を神にアップグレードすることについて語るときには、古代ギリシャの神々やヒンドゥー教の神々のようなものを考えた方がいい。 私たちよりもずっと壮大なスケールで愛したり、憎んだり、創造したり、破壊したりできることだろう。
  5. 「人間至上主義」から抜粋
    私たちは幼いころから、人間至上主義のスローガンをこれでもかとばかり浴びせかけられる。 そうしたスローガンは、「自分に耳を傾けよ、自分に忠実であれ、自分を信頼せよ、自分の心に従え、心地良いことをせよ」と勧める。
    体と脳の設計の仕方を知ってる人と知らない人の間の格差は、大幅に拡がる。 サピエンスとネアンデルタールの間の隔たりさへしのぐだろう。
    二十一世紀には、進歩の列車に乗る人は神のような創造と破壊の力を獲得する一方、後に取り残される人は絶滅の憂き目に遭いそうだ。
  6. 「AIが社会の変化を加速する」から抜粋
    今日までの歴史においてこれほど膨大なデータを十分に処理できる人はいませんでした。 この先、私たちはデータやコンピューターの力を駆使して他の人の心をのぞき込み、何を望んでいるのか、その欲望の支配まで出来るようになるのです。
    • 実例:J.Score
      これは何万人という人の回答を全部集めて性格診断をするもの。個人のデータを使いその方に合った個人の金融をつける。 学生が留学資金を借りたいときに、なかなか借りられなかった。AIは将来の可能性からキャッシュフローを想定しますので、 それは人生を応援するファイナンスということになると思う。(みずほフィナンシャルグループ佐藤会長)
    • AI
      今私たちは第4次産業革命の渦中にあります。あなたを理解し手助けする最もパワフルなものはAIです。 AIを理解すれば大きな武器になります。かつて蒸気や電気が人間を手助けするツールになりました。 AIは仕事の質と効率を上げ幸せをもたらしてくれるのです。(セールスフォース・ドットコム パーカー・ハリス共同設立者)
    もし石器時代に生きていた人に今会ったとしてもあなたと同じ体で同じ精神を持っているはずです。 これから起こる革命は違います。 AIは社会を変えるだけでなく体も精神も根本的に変えてしまう可能性があります。 最早同じ人類とは言えなくなるのです。
    知能と意識は全く異なったものです。知能とは問題を解決する能力です。意識は物事を感じとる能力です。 苦悩、喜び、愛、憎しみなど主観的なものです。 人間はこうした感情を通して問題を解決します。 コンピューターは違います。感情などの意識を発達させることは全くありません。
    現在、世界中の殆どの投資は知能の開発AIにむけられています。 企業や軍隊、政府はAIを必要としており知能で問題を解決したいのです。
    最も恐ろしいシナリオは、意識や感情を持たない超知的な存在に世界が支配されること。 それはほぼ全てにおいて私たちよりはるかに知的な存在ですが、感情や主観もなく人間と全く違った存在なのです。
  7. 「AIが人間を飲み込む」から抜粋
    • 実例:個人の信用度 スコア(アリババグループ)
      もし2人の男性の条件が同じでスコアが600で、もう一人が700だとしたら高い方を選びます。スコアが高いと印象がいい。(若い女性)
    • アルゴリズム
      やがて、私たちはこの全知のネットワークからたとえ一瞬でも切り離されてはいられなくなる日がくるかもしれない。 私のことを私以上に知ってて、私よりミスを犯す数の少ないアルゴリズムがあれば十分だ。 それを信頼して、自分の決定や人生の選択の多くを委ねるのも理に適っている。
    • 警告
      データ至上主義が世界を征服することに成功したら、私たち人間はどうなるのか?
      最初は、データ至上主義は人間至上主義の基づく健康と幸福と力の追求を加速させるだろう。
      ところが、人間からアルゴリズムへと権限がいったん移ってしまえば、人間至上主義のプロジェクトは意味を失うかも知れない。 人間よりもはるかに優れたモデルが既に存在するのだから。
      人間はその構築者からチップへ、更にデータへと落ちぶれ、ついには急流にのまれた土塊のようにデータの本流に溶けて消えかねない。
    • これから生まれる子供たちについて
      彼らは歴史上初めて 成長したとき どんな世界になるのか 解らない時代を生きるのです。 将来働く環境や人々の絆がどんなものになるのか想像もつかないのです。
    • どうしたらいいのか
      最も大切なことは自分自身を知ることだと思います。月並みかも知れませんが自分が何者であるかを理解することです。 テクノロジーを追い求めるだけでなく、現状に満足する方法を学び、自分の内なる考えを深く理解することに時間を使うべきなのです。 あなたの心はどんな越えを発していますか? あなた以外に貴女を理解する人は誰もいません。他の誰もあなたの頭の中を覗いて観ることはできないのです。
  8. 「”衝撃の書が”が問いかけた人類の未来」から抜粋
    私たちはどう歩むべきか。
    • 科学者は
      科学者は社会に危険なことをしていても自覚できない恐れがあります。 科学者は自分たちが生んだ技術が社会に何をもたらすのか、その光と影を真剣に議論すべきです。(カリフォルニア大学 インディア・フックバーナード教授)
    • 金融機関トップは
      イマジネーションの力、想像力、もっと鍛えなければいけない。金融の知識と全く関係なくリベラルアーツ、自己を突き詰めて考える人間力を鍛える。 本を読んだあと強く感じる経験をした。(みずほフィナンシャルグループ佐藤会長)
    • 人工生命体を生んだゲノム研究の権威は
      IQ(知能指数)がどんなに高くても有能とは限りません。人間をより賢しこくしたからといって「ホモ・デウス」にはなりません。 十分な理解もないまま人間自身を設計したり正確や行動を操作するような人たちを心配しています。私たちはまだ十分に人間が何たるかを理解できていない。 (J.クレイグ・ベンター研究所 クレイグ・ベンター所長)
  9. おわりに
    本の内容に驚き、こんな本を読まなきゃ損だと、取り急ぎ主要部分を抜粋して掲示し、皆さんへのキャッチフレーズにしようと書き始めましたが、 ピックアップするにはどの部分をとればいいのか絞れなくて、こんな長たらしい記事になりました。 でも、年末だし、取り急ぎこの量で、掲載します。・・・拾い読みでもしてもらって、興味が湧けば図書館なり買うなどして本を一読されんことを願っています。 若し、読んだら、所感などお寄せください。
    ・・・思うに、金を借りるとしたら我がスコアは如何なるものやら。0以上の可能性はあるのかな?・・・知りたいものだ。
  10. 所感
    ピックアップするだけなら余り面白くないから、自分がどう感じたかを書きたいが、年末で多忙だった。野暮用だが。 例えば、小生愛用の入歯、部分が付くが、それを失くしてしまってその再生が年末に掛かり、タイムロスした。 何しろ、歯医者だけは行きつけのがいいから、青梅から井の頭まで通うのは時間が掛かる。 年明け後、追記するつもりだ。・・・うまく書けるかな?
    例えば、「虐め」の問題。人間が仕切ると意識が入るから虐めが発生するが、ICチップ、というかアルゴリズムが仕切ると、意識はないから虐めは発生しないだろう。 というように人間の方にメリットがある。だが反面、意識がないので、例えば「武士の情け」なんてものは死語となる。多分、侠気、親分肌なども。 ・・・世の中から面白みが失せるかもである・・・。
    • 音楽
      今朝、元日だが、テレビで「空港ピアノ」という番組をみた。 それで思ったのは、ビッグデータからの情報処理アルゴリスムが曲を書いたとしたらどんなだろうと想像してみた。 ・・・人間なら知能と意識(感情)をミックスして曲を書く。だがアルゴリズムには知能しか組み込めない。だからできた作品には精神の高揚要素は無いだろう。
      数日前、これもテレビで、美空ひばりをシュミレートした「美空ひばりアルゴリズム」が発する新曲を聴いた。だがつまらなかった。何故か?・・・多分、 アルゴリズムには感情という意識が無い所為だろう。
      以上から、ビッグデータだけから書かれた曲は雑音源にしかなるまい。 確かに、らしきものはできるだろうが、心に響くことはあるまい。
      知能だけで感情にうったえる曲は書けないとなる。 その延長として知能だけで世界がうまく行くはずがないとなる。 ロボットだけの社会限定でやってもらいたいものだ。
    • ホモ・サピエンスのアップグレード
      4Aeの記述によると、
      創造と破壊を行う神のような力を獲得し、ホモ・サピエンスをホモ・デウスへとアップグレードするものになるだろう。 人間を神にアップグレードすることについて語るときには、古代ギリシャの神々やヒンドゥー教の神々のようなものを考えた方がいい。 私たちよりもずっと壮大なスケールで愛したり、憎んだり、創造したり、破壊したりできることだろう。
      であるが、これが一番怖い変化だ。産業革命は、人間以外の物のアップグレード(変化)だったが、今度のは人間そのものに起こるものだから。不気味である。 予測つきそうにない。・・・二極化が進むだろうことは間違いあるまい。そして定着するだろうと思う。 下層階級の反乱、即ち在来型の革命は芽の内に摘み取られるだろう。むしろ、その階級にあってそれなりの生活を楽しむかもだ。
      ・・・その「生活を楽しむ」が鍵かも知れない。人間は、退屈には我慢出来ないからだ。どうやって退屈させないか、ローマ帝国は「パンとサーカス」で市民を懐柔したが、 結局、潰れて行った。退屈の反対は挑戦だ。となると、競争ということになる。
      1. 人間の脳を活性化する競争の平和的方法はスポーツ(賭博を含む)だが、それだけで何時まで保つやら???。
      2. 挑戦の第2の方法は知的探究だが、それは宇宙フロンティア(開拓)、学術フロンティア、芸術フロンティアが考えられる。
      3. 挑戦の第3の方法は実力行使、即ち戦争だ。・・・死ぬほど退屈なら起こり得る。恐らく物欲由来の戦争より退屈由来の方が可能性が高い。 物は溢れているだろうから。・・・斯くてホモ・デウスは興隆を繰り返す歴史を刻むだろう。・・・だが、ホモ・サピエンスは永遠に存続すると思いたい。
    • ビッグデータについて
      今夜(1月4日)のNHKBs3の夜8時〜10時の番組「英雄たちの選択『百人一首』」で、磯田道史氏が面白い指摘をしたので、記しておく。
      ビッグデータというが、古今和歌集のかな序に「やまとうたは、人の心を種として、万の言の葉とぞなれりける」と書いている。 即ち、やまとうたは、人の心を種として生まれたのであるから、ビッグデータによる入力は必要ではなかった。
      と。
      従って、ここから言えるのは、ビッグデータが万能ではないということを、古今和歌集のかな序から指摘したのである。 ここに、AIの力の限界を見る思いである。・・・やはり人間至上主義が生き残るのではないだろうか。
    • 感動について
      そも、感動とは何だろう。 多分、対象との共感ではないだろうか。 例えば、美空ひばりの曲の場合、彼女の卓越した水平的芸(歌唱力、音楽性、努力、犠牲、など)への称賛が感動の中身だろう。 水平的というのは、自分との比較において水平、即ち同等の存在、という意味だ。例えば、美空ひばりが人類なら、私もそうよ、というような同等意識をいう。 又、対象が自然物の場合、自然を造ったもの、創造主(何者かは問はぬ想定者、或いは自然そのもの)への称賛、それが感動の中身だろうと思う。
      だが、AIの場合、水平性が無いし、創造主ではないという確信がある。 従って、AIは物なのである。それも自然由来の物ではなく人工物なのだ。 従って、AIのすることに感動はうまれないのである。 ここで、AIはホモ・デウスと言い換えてもよい。
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