「サピエンス全史」から「なぜヨーロッパなのか?」

2020/01/21 石井ト
  1. イントロ
    12月27日(金)のNHKBs1の夜8時から10時、「衝撃の書が語る人類の未来〜サピエンス全史」という番組をやっていた。 内容は、ユヴァル・ノア・ハラリ という歴史学者へのインタビューを挟んで、著書の解説という形のものだが、 興味を惹かれる内容の本がとり上げられていた。
    今回、それに触発されて図書館に予約していたその著書の中の一つ「サピエンス全史(下)」が手に入ったので読んでみた。
    この本、下巻だけで264ページある本で、字も小さい。 従ってまだ、半分しか読んでないが、神、宗教、イデオロギーなど目から鱗の発見があった。結構面白い。段々、読んでみようと思う。
    今回は、わが国に文明開化革命を起こさせた西洋文明の興隆についての記事「なぜヨーロッパなのか」(94p〜95p)から、興味深い箇所を抜粋し、 所感を記してみる。 このテーマは、小生ならずとも世界の人々が知りたい最たる情報ではないかと思う。何故なら、未だこれからがあるからだ。 良かったらご覧ください。
  2. 抜粋:なぜヨーロッパなのか?より
    軍事・産業・科学複合体が、インドではなくヨーロッパで発展したのはなぜか? イギリスが飛躍したとき、なぜフランスやドイツやアメリカはすぐにそれに続いたのに、なぜロシアやイタリアやオーストリアは差を縮めることに成功したのに、 ペルシャやエジプトやオスマン帝国は失敗したのか? 何と言っても、産業化の第一波のテクノロジーは比較的単純だったのだから。 蒸気機関を設計し、機関銃を製造し、鉄道を施設するのは、中国やオスマン帝国の人々にとってそれほど困難だったのか?
    中国人やペルシャ人は、蒸気機関のようなテクノロジー上の発明(自由に模倣したり買ったりできるもの)を欠いていたわけではない。 彼らに足りなかったのは、西洋で何世紀もかけて形成された成熟した価値観や神話、司法の組織、社会政治的な構造で、 それらはすぐには模倣したり取り込んだりできなかった。 フランスやアメリカがいち早くイギリスを見習ったのは、フランス人やアメリカ人はイギリスの最も重要な神話と社会構造をすでに取り入れていたからだ。 そして中国人やペルシャ人はすぐには追いつけなかったのは、考え方や社会の組織が異なっていたからだ。
    日本が例外的に十九世紀末にはすでに西洋に首尾よく追いついていたのは、日本の軍事力や、特有のテクノロジーのお陰ではない。 むしろそれは、明治時代に日本人が並外れた努力を重ね、西洋の機械や装置を採用するだけにとどまらず、 社会と政治の多くの面を西洋を手本にして作り直した事実を反映しているのだ。
    このように説明すれば、1500年から1850年にかけての時代が新たな形で浮かび上がってくる。 この時代、ヨーロッパはアジアの列強に対してテクノロジー、政治、軍事、経済のどの面でも明らかな優位性を享受していたわけではなかったが、 それでもヨーロッパは独自の潜在能力を高めていき、 その重要性は1850年ごろに突如として明らかになった。 1850年にはヨーロッパと、中国やイスラム教世界は、一見すると対等に見えたが、それは幻想だった。
    ヨーロッパは、近代以前の貯金があったからこそ近代後期に世界を支配することができたのだが、その近代前期に、 いったいどのような潜在能力を伸ばしたのだろうか? この問いには、互いに補完し合う二つの答えがある。近代科学と近代資本主義だ。 ヨーロッパ人は、テクノロジー上の著しい優位性を享受する以前でさえ、科学的な方法や資本主義的な方法で考えたり行動したりしていた。 そのためテクノロジーが大きく飛躍し始めたとき、ヨーロッパ人は誰よりも上手くそれを活用することができた。 したがって、ヨーロッパ帝国主義が二十一世紀のポスト・ヨーロッパ世界に遺した最も重要な財産は科学と資本主義が形成しているというのは、 決して偶然ではないのだ。
  3. 所感
    • 近代科学と近代資本主義:
      「ヨーロッパ人は、テクノロジー上の著しい優位性を享受する以前でさえ、科学的な方法や資本主義的な方法で考えたり行動したりしていた。」 と述べているが、このことは、特に目新しい指摘ではない。小生の乏しい想像力を以てしても想定内である。
      小生が思うに、この「科学的な方法」の部分のエッセンスは具体的には何か?ということが知りたいのだが、余り参考にならなかった。 それで、小生が推測するその原因についての仮説を記してみよう。次節で述べる「ロゴス」という知性と情報ネットワークの存在だ。これが自分の認識だが、 間違っているだろうか?・・・ご指摘下されば有難い。
    • 「ロゴス」という知性:
      昨年9月22日(日)の毎日新聞朝刊の「今週の本棚」という書評欄に「レンマ学」なる本の書評が掲載されていた。 その中で、「ロゴスは、自分の前に集められた事物を並べて整理する知性作用である」と書かれていた。 このロゴスという知性は、ギリシャ文明を引き継いだヨーロッパ社会に連綿として引き継がれ、その知性作用と、ヨーロッパ人の知的好奇心とが結びついて、 「科学的な方法」が生み出されたのではないかと思う。
    • 情報ネットワークの存在:
      これは聊か後知恵臭く現在の情報ネットワーク社会に模して発想したものだが、当時、ヨーロッパには、大学、学会のインテリ階層のクラブ、 事業会社・団体などの、情報ネットワークがあり、これが、ロゴス的人物の知的好奇心と結びついて、「科学的な方法」の発展に有効に機能したのではないかと思う。 若し、このネットワークが無ければ、一個人の発見や発想が埋没することなく多数の人々の共有するところとなるはずがない。 そして、多数の人々の共感は一個人の研究開発意欲をかきたてるものであっただろうから、相乗効果をもたらし、ますます発展したことだろう。
    • 答え:
      なぜヨーロッパなのか?の答えは、好奇心、ロゴス的知性、情報ネットワークが齎したもの、というのが答えだ。 わが国でも、好奇心を育てるように誘導しなければならない。子供なんて面白いと感じさせれば自分から歩き出すから、お受験ママさんにおさらば!できる。 また、好奇心を植え付けたら、それを形にする思考法、即ちロゴス的知性を育てるべしである。後は、ネットワークを張り巡らせれば楽勝だろう。 このように構想すれば大学入学共通テストの仕方も自ずと決まってくるだろう。・・・楽勝だ!
      日本人はちまちまと考えすぎる。立憲と国民の合流協議みたいなことでは、先行きが危ない。 ゴーンさんの事件で、テレビで誰か検察関係の方が言ってたが、日本の検察は精密検察というそうだ。 ・・・100点満点とらなきゃ気がすまないとは、お受験の影響だろうか!
 
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