- 多民族で構成した国家
ヨーロッパの民族は大きく分けて、ラテン系、ゲルマン系、スラブ系に分けられる。
スラブ系民族は、東スラブ、西スラブ、南スラブに分けられ主に東欧に居住している。ウクライナ人もロシア人も東スラブ民族に類族している。
ウクライナ人の歴史をひも解くと、古来からロシア人優位のもとに共存して来た。
ウクライナ人のなかには、ロシア人と一線を画しそれが両民族の軋轢をもたらしている。
ウクライナには、約78%のウクライナ人が西に居住し、約17%のロシア人が東に分居し、その他ポーランド人、ベラルーシ人、モルドバ人、
クリミヤ人、ユダヤ人等が混在している。
- ウクライナ共和国の独立
・1917年のロシア革命で一時的に独立宣言したが、20世紀を通じソ連連邦の一部に入り共存していた。
・1991年のソ連崩壊に伴い何処にも加盟しない中立共和国国家として本格的に独立をした。ところが大統領選挙では、親欧米派と親ロ派が対立していた。
・2004年には親ロシア派のヤヌコビッチが選ばれたが、不正を指摘され再選挙の結果、親欧米派のコンチェンコが選ばれた。ロシア政府は、欧米の介入があったと非難し、天然ガスのパイプラインを停止し供給をストップさせた。これを「オレンジ革命」という。
・2010年の選挙では、親ロ派のヤヌコビッチが選ばれ復帰したが、EUとの自由貿易締結を中止したり、
ロシア政府に圧迫された政策を続けたため、2014年2月大規模な民衆革命運動による抗議行動が生起し、
ヤヌコビッチ大統領は弾劾され、ロシアへ亡命した。
(ウクライナ騒乱)
・ロシアのクリミヤ併合
2014年3月ロシアは、クリミヤ半島を占拠し無血で併合した。予めロシア特殊作戦戦力部隊と空廷部隊一部等武装勢力と諜報機関(FSB,SVR,GRUのスパイ)を潜入させクリミヤの親ロ派勢力と一体となってクリミヤ半島において主導権を握りつつある中で、クリミヤ住民の国民投票を行い96%の圧倒的多数賛成により、クリミヤ半島を無血で併合した。その後、クリミヤ半島はウクライナから85%の淡水を供給依存しており、ウクライナはダム建設して半島への供給を中止した。ロシア軍によってダムは破壊された。
・ウクライナ東部ドンバス紛争(ドネック州・ルハンスク州)
2014年ヤヌコビッチ大統領がロシアへ亡命後、3月からドネッツ州とルハスク州の親ロ派の武装集団が抗議行動を行い 夫々 人民共和国を独立宣言した。ウクライナ政府は「対テロ作戦」として武力行使した。同年9月に一応停戦協定を結んだが、ロシアの介入もあって闘争は絶え無かった。ウクライナ政府はロシア政府の関与があると軍事的に対立した。2015年2月 独仏の仲介により、「ミンクス協定2」を再締結した。
・2022年2月24日ドンバス地方住民を守るとして「特別軍事作戦」を開始し、ウクライナ侵
攻が始まった。現在まで、約1ケ月半の長期戦になっているが、この戦争は、8年前のクリミヤ
併合から続いており、双方 停戦の見込みがつくまで続くであろう。
これから戦争の終結を早めるため、 ロシアは「核の恫喝」、生物・化学兵器、戦術核を使用も
考慮に入れて戦争遂行することもありうる。
- 「ハイブリット戦争」とは
ロシアのイクライナ侵攻は当初は民族紛争から始まって、ハイブリット戦争に発展している。クラウゼヴィツツは「戦争は国と国が総力で戦う闘争」といい、政治目的を達成するため正規戦と非正規戦を組み合わせた戦争だが、情報、心理、テロ、犯罪行為、プロダガンダ等組み合わさって展開される。古くからある。「ハイブリット戦争」とは、単的に言えば、インフラに対するサイバー攻撃、進化した電子機器による電子戦、諜報活動の情報戦、宣伝活動による扇動等非正規戦を主に無力化を図り制圧し軍事力は最後に行使する戦略である。2014年のクリミヤ半島併合には公民や、企業要員を含め特殊部隊を議会、行政施設、マスコミ、通信施設、空港等に送り込み現地住民を扇動、自治政府の解散、交通遮断といった非軍事的手段を行使して、被害最小限で制圧するという戦略によって戦いの質が変化した。
・2013年3月 ロシア参謀総長 ゲラシモフは「21世紀において、戦争は宣言なく始まり非軍事的手段が果たす役割が増大している。
それは兵器の力を超える広範囲に適用される」と発言した。これは「ゲラシモフ・ドクトリン」と言われロシアの戦略方針とされた。
2014年 クリミヤ半島が無血で併合でされたことから「ハイブリット戦争」と言われるようになった。あるいは「新世代型戦争」と言われている。
- ウクライナ降伏論
戦争終結は、勝戦、負戦、停戦(仲直り)があるが、国と国の戦いであれば、戦力格差により、政治目的を達成不可能な時、
国民の損害を少なくするためという「降伏」がありうる。
弁護士 橋本徹氏やTBSの玉川徹氏のようにウクライナとロシアは最初から戦力差が明らかなので、
負けを宣告して国民の被害を少なくすべきという「ウクライナ降伏論」の意見は、いかにも日本人の「平和ボケ」した思考である。
日本のように一民族国家は、民族紛争を理解することは難しい。ウクライナ民族存亡、文化、子孫、国家滅亡に関わる戦いである。
命より大事なものがあることを自覚している。今やEU諸国が支援し自由主義とロシアの専制主義に対抗する代理戦争になりつつある。
仮にウクライナが降伏したら、多大なウクライナ人はシベリヤへ抑留され虐殺・虐待されたり、開発使役されるであろう。
ウクライナ人はロシア人と同一化され民族浄化に追い込まれ滅亡するでしょう又ウクライナ国家はロシアに一体化され併合される
悲運が待っている。
- ウクライナ戦争の始まりは民族紛争である
多民族国家のウクライナ人は、2014年のクリミヤ併合から引き継いだロシア人に対する8年間の民族闘争であり、「終わりのない戦い」である。西側から兵器支援、難民支援、食料等経済支援を受けながら停戦交渉を有利に導くために長期化していると思われる。従って降伏はない。又ウクライナは、「国家なき国民」と言われ、連邦制を執っていない民族国家を形成しているので国内の民族対立は避けられない弱点がある。民族闘争は限りなく続くであろう。プーチン大統領は、ロシア人とウクライナ人は同じ民族だと認識しているため、ウクライナの民族主義の弱点を見抜いてウクライナ東部併合完了すれば、次は全域まで併合を意図し攻め込んでいると思う。
- 戦争を知る
戦争は誰でも避けたい。だが戦争は起こる。どのように戦争を抑止するかを考えなければならない。平和は与えられるものではない。戦争を知らなければ本当の平和は構築できない。
劣勢なウクライナ民族は自ら犠牲を払っても戦っており、自国を自ら衛る国には、価値観を共有する国が援助すること又国際的に中立独力防衛は危機対応が不十分で集団的安全保障の安全性をウクライナ戦争は教えてくれた。