安全保障と国民
2022/4/10 石井ト
一昨日の4月8日(金)、毎日新聞「特集ワイド」に、法哲学者・東京大学名誉教授 井上達夫さん 67歳の論文が載っていた。
題して「この国はどこへ これだけは言いたい」で、「安全保障 国民が立たなければ」との見出しがついている。
小生、予てから、自国をどう守るかということについて関心を持っていたので、本論文から、主要点を抜粋して紹介し、
最後に小生の所感を記すことにした。
良かったらご一読の上、ご意見などお寄せください。
抜粋:井上論文から抜粋
- 今回の事態は、自国をどう守るかという問いを日本にも突き付けている。
「我々がウクライナから学ぶべきは、国が侵略された時、その国民が本気で戦おうとしない限り誰も助けてくれないこと。
代わりに戦ってもらおうなんて甘いです。」
- 「日本人は民主体制の存続を自明視しているところがある。
戦後、米国からプレゼントされたから、何もしなくても民主主義は享受できると思っている。」
- 「日本は米国と安保条約を結んでおり、いざとなれば米軍が守ってくれるのでは?」との問いに、
「米軍基地が攻撃されたら米軍も絶対反撃します。でも、基地以外の日本の領土、米軍にとって戦略的、死活的な利害がないところ攻撃されても。
『それは自衛隊で守りなさい』と言われる可能性が高い」
- 日米安保条約第5条は、日本の施政下にある領域が武力攻撃を受けた場合、日米が「共通の危険に対処する」と定めた条文だ。
だが、「米軍が出動するとはとは限らない」というのである。
- 第5条には共通の危険に対処する前提として、『自国の憲法上の規定および手続きに従って』とある。
米国の憲法上、開戦の決定権は大統領ではなく議会にある。
つまり米国はいざという時、『議会の承認が得られないから駄目』という『逃げ道』を用意しているのです。
- 日米安保に関して言えば、寧ろ日本が米国の戦争に巻き込まれるリスクの方にこそ目を向けるべきだという。
米軍が在日米軍基地を使って他国へ攻撃を始めた場合、日本はその意思に関係なく加担したと見做され、
敵国から反撃を受けるリスクを背負うことになるからだ。
こうした状況を米国への「軍事的従属化」と呼ぶ。
- 自衛隊は今や世界有数の武装組織と言われるが、その乱用を抑止するための戦力統制規範を欠いている。
更に、国際人道法に従って自衛隊の交戦行動を統制する国内法体系もない。
- 戦力統制規範とは、シビリアンコントロールや武力行使に関する国会の事前承認、戦争犯罪を裁くための軍事司法制度などのことを指す。
- 「自衛隊に対する防衛出動命令は、今の法体系でも首相が出すことが出来ます。ですが、その乱用を抑える憲法的な抑制がない状態なのです。
- ではどうすべきなのか。予て提唱してきたのが「憲法9条削除論」だ。
削除するのは、9条解釈を巡る「神学論争」によって安保政策の実質的議論が棚上げされている状態に終止符を打つためだ。
- 9条を巡る具体的な動きは起きていない。
「共鳴する人は少数いるけど、彼らは選挙で勝てないとしようがない。私が言ってるようなことを本当に言ったら国民が怖がって票をくれないかもしれない。
だから最終的には国民なんです」
- 戦後日本の占領統治にあたった連合国総司令部の最高司令官、ダグラス・マッカサーは離日後、米議会で
「日本人は12歳の少年のようだ」と語ったという。井上さんはこの言葉がいまだ本質を突いている気がしてならない。
日本人の文化精神年齢に関しては非常に無礼な発言でしたが、政治的精神年齢についてはその通りだった。
あれから70年になりますが、相変わらず12歳のままです。」
- 国の安全保障を他国に委ねず、主体的に統制する道を開くのか、閉ざしたままにするのか。その覚悟がもとめられていると感じた。
所感:井上論文を読んだ小生の所感を記す。次の通りだ。
- 日本人12歳説についてはその通りだと思う。
その特徴は次の通り。
- 性善説の信奉者で、話せば解ると信じている。
- 想像力が弱く想定外のことには思考停止する。
- 目先のことにこだわり俯瞰視することが出来ない。
- 思考が情緒的で非理性的。
- 言霊信仰の信者で、「戦争反対」と叫べば戦争は起きないと信じている。
- 国の安全保障について
- 国の安全保障がアメリカ議会に握られてるのは属国的で自尊心が許さないし危険。
従って、国の安全保障を他国に委ねず、主体的に制御できる道を選ぶべし。
- そのアプローチ法として、我々国民は、いつまでも12歳に留年するのではなく、
中高大と進学し、一丁前の大人にならなければならない。
付言
ダグラス・マッカサー元帥が、日本人12歳説を説なえた点、これを70年前に気がついたわけだから、慧眼と言わざるを得ない。
流石、連合国総司令部の最高司令官を務めたっだけのことはある。
一方、70年もの長きに亘り留年し続ける我が国民、若さというか愚かというか、いつまで浮世離れしつづけるのかと、聊か情けない思いである。
早く大人になれよ!だな。そのためのアプローチ法として、9条削除案、結構な方法だと思う。
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コメント
谷川眞雄
谷川です。私の立ち位置からいって、基本は井上名誉教授の意見とその軌を一にしているが、今次ロシアのウクライナ侵攻に当たっては、
彼我の力関係からいって明らかな負け戦、戦うはあたら国民に犠牲を強いるだけ、なんといっても命が大切、
不本意でもここは白旗を掲げ主体的に武装放棄しガンジーの無抵抗の抵抗に徹すべ
しとゼレンスキーに(毎日新聞オピニオン経由)勧めた。
この点、井上先生の立場からすると私が節を曲げることになるのかもしれないが、極めて多数の無辜の民の命が失われる、本当に戦って良しとするのか、
その後の残虐極まりない悲惨な結果の連続を目の当たりにするとこの疑問は解けない。プーチンの悪逆無道ぶりは論外万死に値する。
同じく毎日新聞「ふんすい塔」にゴルゴ13の登場を申し込んだのだが、音沙汰なし。
欧米諸国は軍事・経済等全面的に支援しているが、自らを「当事者外」においている。戦争拡大により自国民が犠牲になるのが怖いのです。
所詮は自分の血を流さない勝手無責任な支援といってよい。
当初、役者上がりの何ができるかと僭越にも軽視していたが、プーチンの攻撃を正面で受け止め、
「自由の国ウクライナに降伏なし」勇猛果敢、八面六臂の活躍で国民を鼓舞し先頭に立って世界屈指の軍事大国に応戦している。
国家最高権力者・統治者としての肝の据わった愛国的勇気・闘争心にはただ畏れいるばかりである。
しかしそこに、不遜で皮肉な見方だが、、私は一抹の不安を覚える。彼は完璧な戦う大統領を演じきっており、世界から注目されやんやの拍手を得ている。
彼の言動は終始理想的大統領像のシナリオに沿って戯曲化された舞台上の自己陶酔的演技を通しているのではないのかという懸念である。
端的にいうと、今回の「降伏なし」の応戦は本当に国民のために良かったのかという疑念があるからである。
関連して、予て自問自答未だ結論を得ていない、
井上先生の意見中「外敵が来た場合、命がけで戦わないと今享受している自由は消えちゃうんだよ」にある「自由」である。
一般大衆に取って思想的自由は命よりも重いのか、生に伴う日常的喜怒哀楽的自由で十分ではないか。
抑々今次危機はバイデン大統領が宣戦布告した自由など価値観を異にする国家体制間の対決に根差すといってよい。
民主制は専制より優れているのだろうか、日本の民は中國の民より幸せなのか。
第3次世界大戦が起こるとすれば欧米対中ソ間の「世界観対決絶滅戦争必至という。
最後に名前は忘れたが、あるTV番組で京大教授も「ウクライナ危機が教えるところの要諦でしっかり認識すべきは、世界に主権維持の政府はなく、
分権国家から成り、国家の主権、領土保全は戦いとるしかない。」と強調していたの印象的であった。
なお、ウクライナの独立と「自由」の確保は「自由」が国のアイデンティティになる位長い苦闘の歴史を経て確保されたことは見聞している。
長々とすまん。
(2022/4/11 0:07)
コメント
野津手弥生
八十四歳のお誕生日おめでとうございます。
日本の自国防衛は、ウクライナのロシア侵攻で俄に意識せざるを得ない関心事になりましたね。
台湾は防衛力を強化しアメリカとの安全保障の再確認を実行しました。小国の日本の人達、いつまでも平和呆けではいつ何があるか分かりませんよ。
日本も目覚めねばと、ウクライナを見て心を痛めています。 弥生
(2022/4/10 16:00)