- 「ホメオスタシス」が生み出すものとは
物理現象では、「物」は物に特有な熱平衡状態で安定し、計れば常温温度を示す。
物を温めてやると、熱平衡状態に至るまで、赤外線を放射して、熱平衡状態に戻る。
というような自動装置が備わっている。
また、我々が馴染みのところでは、自動車のラジエーターがある。
ラジエーターは、エンジンの冷却を担う装置だが、冷やしっ放しでは燃焼効率に悪い影響がでるので、
エンジンの熱を感知するための装置としてサーモスタットが不可欠となる。
サーモスタットは、エンジンが最適な温度環境で作動できる上で欠かせない熱感知自動装置なのである。
「物」や「自動車エンジン」に自動装置という仕掛けがあるように、
生命現象でも、「ホメオスタシス」という仕掛けがあって、
生命維持に最適な状態に保つ自動装置があるようだ。
その「ホメオスタシス」のお陰で、生物は進化し、人間に至っては、神経系の生成を生み、意識を出現させたところが面白い。
何故なら、ホメオタスシスとは、単に生存のみならず繁栄を享受し、
生命組織としての、また生物種としての未来へ向けて自己を発展させるよう生命作用の調節装置だからである。
生命体ではないAIでは、意識を生成する「ホメオスタシス」的仕掛け、実現可能だろうか?
・・・それが出来れば、AIを生命体と呼べるかも。出来なければ、所詮はデータ処理装置、統計機械だろう。
- 安定とは
山の頂上にあるボールと、谷底にあるボールとどちらが安定かと言えば、谷底の方である。前回も言ったが、自然がエネルギーの低い方を好んでいるのではない。
谷底では少し移動すると元の位置に戻す方向に力が働くので、ボールは仕方なくその辺りの位置でうろうろするしかないだけだ。
それを人間の言葉で解釈すれば、「エネルギーが低い方が安定である」となるのである。
ボールの安定という場合、その状態を計るのにエネルギーという量を使って数値化する。
「ホメオスタシス」の場合、ボールの場合のエネルギーに当たる量とは何だろう?
仮に、その量をXと表すとすると、「ホメオスタシス」は、Xを刻々と計測し、Xが最低になるよう身体各部に指令を発する、となる。
- 進化とは
去る3月4日(月)、NHKBs1で、「東京ロストワールド」という番組をやっていた。
それによると、小笠原諸島の兄島では、アニジマカタマイマイというカタツムリが繁殖していたが、人間と共に入り込んだノネズミにより、
捕食されるようになり、絶滅に瀕する事態となったそうだ。
だが、面白いのは、そのアニジマカタマイマイが、
従前の習性にはなかった地下20cmほどに潜るようになったそうである。地下20cmにはノネズミは来ないからである。
これって、「ホメオスタシス」という自動装置が生命維持上の不安定状態から安定状態への移行を指令した結果獲得した住環境適応能力、
言わば進化と言えるのではないだろうか。
というより、実際の仕掛けは単純なものだろう。喩ていえば、アメーバーが光に反応してその方向に向かう、というような。
そのように、ある事象を検知(センス)してから、それへの対応(アクション)は、様々だろう。正解もあれば誤解もあるだろうがそれは結果論で、
色々な対応の内、たまたま地下に潜ったものが生き残って世代を重ね、その結果が表出したに過ぎないと思う。
この場合、20cm地下に潜るという対応が正解だったというわけだ。
アメバーも、光の方向に進んだもの(そのような遺伝子を持ったアメーバー)が生き延びて世代を重ねたということだ。
アメーバーは、何も考えてそうしたわけではない。結果がそう見えただけである。
遺伝って、そのようなものではないだろうか。即ち、適者生存の現れということだ。
このような世代交代を組み込んだ自動装置が、進化の源だということは面白いと思う。
進化とは、「ホメオスタシス」の指令と世代交代という時間変化の結果の表出と言えるわけである。・・・神の出番はなさそう。