「セント・オブ・ウーマン」という映画

石井俊雄
 
今日はひな祭り。ひな祭りといえば童謡「うれしいひな祭り」が素晴しい。 作詞はサトー・ハチローだが、彼の多くの作詞歌の中でもこの歌が一番の人気だ。 サトー・ハチロー自身は余り好きではなかったそうだが。
それで、本題だが、「セント・オブ・ウーマン」という映画をみた。2月29日のBSシネマでのことだ。 余り期待してたわけではないが、結果は素晴しかった。 「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」(原題: Scent of a Woman)は、1992年に製作されたアメリカ映画。 盲目の元軍人を演じたアル・パチーノがアカデミー主演男優賞を受賞した。
人生に悲観し、ふて腐れた孤独な盲目の退役軍人(アル・パチーノ)が、 自身もトラブルを抱え人生の選択に迫られている心優しい青年との数日間の交流を通じて、 自分の人生を見つめ直し、新たな希望を見出すまでを描いたヒューマンドラマ。
あらすじは、次の通りだ。
「ボストンの全寮制名門高校に奨学金で入学した苦学生チャーリーは、 裕福な家庭の子息ばかりの級友たちとの齟齬を感じつつも無難に学校生活を過ごしていた。 感謝祭の週末、故郷オレゴンへ帰るための旅費を稼ぐためチャーリーはアルバイトに出ることになっていた。 そのアルバイトとは、姪一家の休暇旅行への同伴を拒否する盲目の退役軍人フランク・スレード中佐の世話をすること。 とてつもなく気難しく、周囲の誰をも拒絶し、離れで一人生活する毒舌家でエキセントリックな中佐にチャーリーは困惑するが、 報酬の割の良さと中佐の姪・カレンの熱心な懇願もあり、引き受けることにする。
感謝祭の前日のこと、チャーリーは同級生のハヴマイヤーたちによる校長の愛車ジャガーに対する悪質な悪戯の準備を目撃した。 生徒たちの悪戯に激怒した校長から犯人たちの名前を明かすなら超一流大学(ハーバード)への推薦、断れば退学の二者択一を迫られ、 感謝祭休暇後の回答を要求される。チャーリーは同級生を売りハーバードへ進学するか、黙秘して退学するかで苦悩しながら休暇に入ることになった。
中佐はそんなチャーリーをニューヨークに強引に連れ出し、ウォルドルフ・アストリアホテルに泊まり、“計画”の手助けをしろ、という。 ニューヨークでの、女好きであることを隠そうともしない中佐の豪遊に付き合わされるはめになったチャーリーは、 共に過ごすうちに中佐の人間的な魅力と孤独を知り、徐々に信頼と友情を育んでいく。 旅行の終りが迫ったころ、中佐は絶望に突き動かされた計画を実行しようとするが、チャーリーは必死の想いで中佐をひき止め、 ふたりは心通わせた実感を胸に帰途につくことができた。
休暇開けのチャーリーには、校長の諮問による公開懲戒委員会の試練が待っていた。 チャーリーは、全校生徒の前で校長の追及によって窮地に立たされるが、そこに中佐が現れ、 チャーリーの「保護者」として彼の高潔さを主張する大演説を打ち、見事にチャーリーを救うのだった。 満場の拍手の中、中佐はチャーリーを引き連れ会場を後にする。 そのとき後を追ってきた政治学の女性教授クリスティーン・ダウンズに対し、洒脱な返しをする中佐とそれに乗るチャーリーのふたりは、 新たな日常へと歩み出すのだった。」(以上、「ウイキペディア」より抜粋)
小生の印象に残ったのは、
  1. ウォルドルフ・アストリアホテルのレストランでのダンスシーン。 曲目は、「ポル・ウナ・カベサ (Por una cabeza)」。 意味 は、競馬用語の「首(ひとつ)の差で」を意味する。 カルロス・ガルデルが1935年の映画「タンゴ・バー」 (Tango bar) の挿入歌として作曲したもの。 ギタリストで作詞家のアルフレード・レ・ペラ (Alfredo Le Pera) による歌詞がついている。 首の差で恋に破れた男の心情を歌ったものだそうだ。
    ・・・このシーンや雰囲気は素敵だが、アル・パチーノのダンス、余り上手くないね。ダンスの出来ない私が云うのも何だけど。
    相手役は、ガブリエル・アンウォー(Gabrielle Anwar)という女優さん。1970年生まれだから当時22歳ということになる。 その後色々な映画にでたそうだが、小生はよく知らない。 だけど、このダンスシーンを踊ったことで、後々まで、「セント・オブ・ウーマン」でタンゴを踊った女優として名を残すだろう。
  2. 公開懲戒委員会のシーン。
    1つは、中佐の大演説の論旨。
    チャーリーは、校長の発する「誰を見たのだ」との鋭い質問に「平均的な生徒を見た」と答え実名をあげなかった。
    中佐は、これを受け「チャリーの沈黙が善か悪かは分からない。だが、自分の未来のために友を売る人間でないことは確かだ。 これを清廉潔白という。勇気と呼ぶ。リーダーの持つべき資質だ。 ・・・チャリーも岐路に立った。そして彼は正しい道を選んだ。これは品性を養う信念の道だ。 旅を続けさせてやろう。彼の未来は君等委員の手の中にある。価値のある未来だ。私が保証する。 潰さずに守ってやれ!優しく」と述べ、最後に「その決断を誇る日がくる」と締めくくった。

    もう1つは、「公開懲戒委員会」という問題解決の方法。
    目撃者二人の証言を聞いた委員たちは次の裁決を出す。
    1. 3人の生徒に対しては、悪質な悪戯をした疑いで「謹慎処分」。
    2. 実名をあげたが推測だと証言したもう1人の目撃者に対しては、「何の褒賞も与えない」というもの。
    3. チャーリーに対しては、この問題について「答える必要なし」というもの。
    この解決方法、素晴しい。
    • の疑いに対し謹慎という処分。・・・実に面白い。何故なら、疑いというだけで処分していいのかという議論に発展することなしに決着したから。お茶を濁して済ませないところがいい。
    • の「何の褒賞も与えない」という裁決も面白い。なら何も云わなきゃいいじゃない!となりそうだがちゃんと結論を言葉にするところが面白い。
    • の「答える必要なし」という裁決も面白い。・・・日本だとこうはならないだろう。答える義務という習慣が無いから。
  3. ラストで奏でられるBGM。曲目は、チャップリンのコメディー映画「街の灯」(1931年)の主題歌。 この映画もチャップリン演じる放浪者の相手役(盲目の花売り娘:ヴァージニア・チェリル 演じる)が盲目なので使われたのだろう。 主題歌は"La Violetera"(すみれの花売りの唄)。 この曲はホセ・パディリャ(スペイン 1889-1960)によるもので、 ラケル・メレー(Raquel Meller)の歌に感動した彼がこの曲をテーマとして使ったそうです。 似た感じの曲に映画「ライムライト」のテーマソングがあるがそれもチャップリン作曲と聞いた記憶がある。
以上、縷々述べたが、一番のお勧めは実際映画を見ることに尽きる。
最後に少しだけ付け加えるが、このタンゴを踊るシーンで使われた曲は、「シンドラーのリスト」でも使われていた。
歌っているのは、作曲したカルロス・ガルデル本人だ。 オリジナルで味わってみるのもいいのではないだろうか。
「シンドラーのリスト」(Schindler's List)は、 スティーヴン・スピルバーグ監督による1993年のアメリカ映画。日本での公開は1994年2月。 第二次世界大戦時のナチス・ドイツによるユダヤ人の虐殺(ホロコースト)の中、 ドイツ人実業家オスカー・シンドラーが1,100人以上ものユダヤ人の命を救った実話を描く。ホロコーストに関する映画の代表的作品として知られる。
 
 
 
 
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