「グッド・ウィル・ハンティング」という映画と天才

石井ト
  1. イントロ
    今日、13:00分から、NHKBs3で「グッド・ウィル・ハンティング」(Good Will Hunting)という映画をやっていた。
    天才的な頭脳を持ちながらも幼い頃に負ったトラウマから逃れられない一人の青年(マット・デイモン)と、 最愛の妻に先立たれて失意に喘ぐ心理学者(ロビン・ウィリアムズ)との心の交流を描いたヒューマンドラマである。
    1997年12月のワールドプレミアでは当時は無名の俳優であったマット・デイモンが執筆した脚本の完成度の高さに注目が集まり、 最終的にアカデミー賞やゴールデングローブ賞で脚本賞を受賞するなど高い評価を受けた。(以上、ウイキペディアより引用)
  2. 映画のあらすじ
    フィールズ賞受賞者でマサチューセッツ工科大学数学科教授のジェラルド・ランボーが、解くのに2年もかかった数学上の難問を、わずか一晩で解く清掃員の話である。
  3. 天才への憧れ
    小生、相対性理論を発見したアインシュタインの天才ぶりには畏敬の念を禁じ得ない者だが、その所為で、天才というものには敏感だ。 従って、標記映画の主人公の天才ぶりに興味を覚えた次第である。
    一種のファン心理と云うことだろう。自分にないものに憧れるのは年齢・人種に関わりない人類共通のものなのだ。 若しかしたら、美人に憧れるのと同根の心理かもである。
  4. 天才の実例
    そんな天才ファンたる私の日常に、最近、一冊の本が映った。標題は、「12歳の少年が書いた量子力学の教科書」(近藤龍一著)だ。
    1月ほど前、久し振りに訪ねた図書館で、この本を見付け、借りて読んでみた。 内容は、事実の確認(実験)、原理化、数式化を簡潔に述べている。これが、12歳の著作かとは信じられない出来栄えだ。 何故なら私にも解ったから。
    巻末の著者紹介には、次のように記されている。
    幼いころから本好きであり、あらゆる学問分野に興味を示し、どん欲に知識を吸収してきた。 科学については、本人も知らないうちにある程度の知識と興味があったが、9歳のとき、本格的に理論物理学の独学を開始する。
    この頃、量子力学の存在を知り、・・・10歳の頃から数式レベルの理解を目指して、物理数学の独習を始め、11歳のとき、本を書いてみたいと思った。 12歳のとき、本書の執筆を開始し、完成させる。現在都内の高校一年生。(2017年7月25日 初版発行より)
    眞に、天才と言えるのではないだろうか。
  5. 所感
    小生、日大理工学部物理学科を出たが、この本にはその講義の殆どが含まれ簡明に記されている。
    その記述スタイルは、事実の確認(実験)→ 原理化 → 数式化だ。
    人文学と自然科学との相違は、事実の確認(実験)の正確さにある。その正確さにおいて極めて厳密なのが理系の学問だが、それが正確に説明されているので読み易かった。 先ずは、人文学ではあり得ない現象である。 だから、アインシュタインには及ばないだろうが、天才の顔、見てみたい。この映画のようかもだな。
  6. 数式化の重要性について
    数式化が何故必要かと言えば、その数式があれば、実生活に適用するための学問である工学に応用可能となるからだ。 数式化がなされなければその知識が広く応用されることはなく、一部の名人芸の範囲に留まる。
    そして、その数式化のためには、その前段階として、事実の確認(実験)→ 原理化 → 数式化が所要。棚ぼた式に数式化できるわけではない。
    数式化の応用例として半導体がある。これって今や人類の生死を決するほどの重要物質だ。「産業の米」と呼ばれる所以である。 その半導体設計に量子力学が応用され、生活に役立っている。だから、事実の確認(実験)→ 原理化 → 数式化のサイクル思考が重要なのである。 この過程の何処かを手抜きしては発展はないと思わなければならない。そしてそこに天才が結びつけばなおハッピーだろう。
    ギリシャ文明以来、このサイクルを実践してきたのが西欧文明だ。科学史の東西を分かつものは、事実の確認(実験)→ 原理化 → 数式化の実践力にあった。 僅かな違いを放置せず、その原因を追究し数式化まで持って行く思考こそ、現代科学を齎した原動力だ。・・・そこのとこが、東洋的思考との大きな違いだと思う。 科学史を見ればそれが解る。
  7. 文明と価値観について
    西洋文明を特徴付けるものを一言で言えば、それは事実忠誠主義だろう。中華文明はと言えば、人文忠誠主義だろう。 因みに日本のそれはと言えば、人和忠誠主義だろう。17条憲法の聖徳太子もいいが、人和が事実に優先する弊害を生んだという側面もある。
    斯くて現在は「事実」、「人文」、「人和」への価値観の相異が作った結果であるとなる。 果たしてどの価値観が、これからの人類にとって有益だろうか?
    小生は、「事実」だと思うが、皆の答えを訊きたい。
 
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