近くて遠い国

令和2年5月末日
 山下 永二
地勢的に見て、WW−Uまでのフランスとドイツ、インドとパキスタン、中東諸国、中国と周辺諸国 等隣国はトラブルが多い。日本と韓国は、海を隔てているが、昔から仲の良くない隣国関係が続いている。
  1. 韓国の「反日主義」は根が深い
    (1) 私は、昭和58年に韓国を訪問した時 ソウル市の西大門の博物館に案内された。そこには、 豊臣秀吉の朝鮮出兵と戦った李瞬臣将軍や伊藤博文を暗殺した安重根の英雄化した蝋人形像や暗殺場面 の写真等反日資料が館内一杯に陳列されていた。その時日韓関係は根が深いなと思った。 安重根がハルピン駅で伊藤博文を暗殺した翌年 1910年に「日韓併合」条約が調印された。
    (2) 韓国国内事情は分りにくいが、最近、韓国の学者や知識者5人が書いた「反日種族主義」 が韓国でも、日本でもベストセラーとなった。又韓国人の反日感情の根源について、 韓国出身の拓殖大教授 呉善花氏(オ・ソンファ)は「韓国併合への道」、 「侮日論」など多数出版し分かりやすく解説している。彼女は、韓国済州島出身で、 母親の影響もあって幼いころから日本に興味をもっていた。 昭和58年に留学で来日し様々な葛藤を経て知日派になった。 平成10年日本に帰化し評論家として執筆活動をしながら拓殖大学教授も勤めている。 韓国メディアの反日煽動の一環に彼女の出版本を批判し始め、 「親日売国奴」等人権を貶める卑劣な言論弾圧受けるようになった。 韓国政府はマスコミに同調して身内の監視・取り調べから本人の入国拒否等人権侵害を露わにするようになった。 母親の葬儀も親族の結婚にも入国拒否されたという。 その理由は「大韓民国の利益又は公共の安全を害する行動をする恐れがある」という。日本と同じ民主主義国家 でありながら人権に関する考え方がかくも違うのである。彼女によれば、「反日主義」は、 朝鮮民族の地勢的及び歴史的特性から生まれたという。
    (3) 朝鮮半島の地勢的条件と歴史
    朝鮮半島は、三世紀 三韓、高句麗、新羅、百済の三国時代、七世紀の統一新羅を経て統一高麗になり、 戦乱の歴史を繰り返し、1392年〜1910年の約500年李王朝を築いた。李王朝は中国に朝貢しながら、 事大主義(大に仕える)を摂り生き延びてきた。二十世紀の帝国主義時代に入り、ロシア、 清と日本の挟間のなか1910年から1945年の間日本に併合された。 朝鮮民族にとっては許しがたい歴史の空白を「日帝36年」と読んでいる。
    (4)近年の日韓関係
    • 竹島の実効支配
      韓国は、1948年に独立し初代大統領李承晩は、反日政策をとりながら、51年2月 李承晩ラインを宣言し竹島を実行支配した。
    • 歴史認識にもめた日韓基本条約の締結
      第5代朴正熙大統領の時 植民地支配した日韓併合は有効か無効かという解釈に関する歴史認識に相違があり交渉は、 15年の間会談を重ねてようやく1965年に日韓基本条約が調印された。 付随の日韓請求権及び経済協力協定では、有償3億ドル、無償2億ドル、民間借款3億ドル計8億ドルの経済協力を協定した。 これは当時 韓国国家予算の2倍強であった。 日韓両国の請求権問題は、この協定の第二条において「完全かつ最終的解決された」と条文化された。 個人に対する請求は韓国政府の強い要望もあり、一括資金供与され無償3億ドルの中から韓国政府が補償することになった。 韓国は、朝鮮戦争で疲弊し最貧国から日本から経済協力の支援を受けてインフラ整備等経済の立て直しを行い見違えるように 経済が復興して「漢江の奇跡」と言われた。
    • 文在寅大統領の「反日清算」
      文在寅大統領になってから過去の清算として反日主義を強め、慰安婦問題、海自の哨戒機に対するレーダー照射問題、 旭日旗掲揚問題、更に2018年10月30日徴用工の請求権協定に関する韓国大法院の判決により日韓関係は戦後最悪になった。
  2. 徴用工の請求権協定に関する韓国大法院判決について
    (1) 韓国大法院の徴用工の日韓請求権協定判決
    植民地支配による不法な侵略行為に協力した新日鉄住金に対して精神的苦痛の慰謝料として、 原告 強制徴用工4人に1人当たり1億ウオン(約1000万円)賠償を支払うよう命じた判決である。 日本人としてそのまま受け入れならない。事実を検証しながら疑問点を明らかにしたい。
    (2)「日韓併合」条約及び「日韓基本条約」を反故にした裁判
    「日韓併合」は不法な植民地支配した併合は無効であると断罪した。従って「日韓基本条約」も無効とした。 条約を一方的に無効にし「不遡及」の法理を無視した。大法院とはいえ、国際法に承認された条約を一方的に破棄し、 司法が政治に介入することが許されるのだろうか。 当時の高宗皇帝は、反対していたが御前会議を開き協議され修正案を提出して最終案が確定して調印した。 両条約は双方妥協し国際法上有効な条約として、英、仏、米、独、蘭等関係各国も認めていた。 露と清は黙認した。平成13年(2001年)に日・韓・米・英の学者によって「日韓併合」について合法か違法か審査して 国際法上有効と認められた。歴史を歪曲した裁判と言わざるを得ない。
    (3) 過去に支払った個人補償と「慰謝料」の二重支払請求
    過去の個人補償請求権は容認し更に「慰謝料」となれば、二重請求になる。又慰謝料を容認すれば他の分野にも拡大され、 何でも慰謝料として補償金は天文学的に膨れ上がり容認できない。
    (4) 原告は募集により応募した「旧朝鮮半島出身の労働者」で「強制徴用工」ではなかった。
    • 徴用工とは、「国家が国民を強制的に動員し一定の業務に従事させること」と広辞苑は定義している。 当時日本人男子が出兵し少なくなったので、三段階にかけて半島から戦時労働者を動員した。
      @ 1939年〜41年民間企業が「募集」によって集めた。
      A 1942年〜44年9月は、朝鮮総督府が「官斡旋」し募集により民間企業に割り当てた。
      B 1944年9月〜45年3月まで国民徴用令に基づいて「徴用」された。
    • 判決では、「強制徴用」と言っているが原告4人とも、43年ごろまでに「募集」によって応募した者であって強制ではなかった。
    (5) 過酷な労働環境でなかった
    • 年齢的に未成年であったため、朝鮮人の舎監が保護者となり、給与などを管理し親元に送金したり、 通帳と印鑑を預かり金銭管理していたという。
    • 炭鉱等に働く鉱員は、未熟なので熟練した日本人とグループに入れて一緒に協同して働いていたという。 奴隷的労働環境ではなかった。
    • 賃金は、日本人も朝鮮人も同額だったが未熟と熟練と勤務年数により異なっていたので必然的に格差があった。 (「反日種族主義」に記載 )
    (6) 個人補償は過去二回支払れた。
    • 個人補償は、協定交渉中韓国政府の要求により韓国政府が対象労働者に対し支払うことになっていた。
    • 徴用工に対する個人補償は、韓国政府から過去二回支払われていた。一回は、請求権補償法に基づいて1975年〜77年の行われ、 総額91億8255万ウオンが支払われた。二回目は、廬武鉉政権時に2010年から死亡者、 行方不明者を含めて総額7748億ウオンが支払われた。
    (7) 公正より政治的イデオロギーを優先した裁判
    韓国大法院長 金命洙は、左派系裁判官で文在寅大統領が一地方裁判所長から抜擢したという。 左翼系「共に民主党」の文在寅大統領の政治に誘導された司法行政であり、 法の公正中立より文在寅政権に左右された裁判である。 韓国の三権分立は一体どうなっているのだろうか?韓国では法律より感情が優先するという風習があるという。 これを「国民感情法」というそうだ。
    (8) 歴史を捏造した「強制徴用」問題
    日韓基本条約交渉を阻止するため、1965年 朝鮮総連の朝鮮大学校教員 朴慶植が「朝鮮人強制連行の記録」という著書を発刊した。 当時22万余人いた朝鮮人労働者を「労務動員」と呼んでいた。 これを「日本の官憲によって強制的に連れていかれ動員された」と主張した。又「日帝が残酷に朝鮮人を搾取した」と煽動した。 歴史を歪曲し捏造した「強制徴用」と「奴隷労働」という言葉が韓国内で広がり今ではこれが定説として使われているという。 以上は、「反日種族主義」に書かれている。先に述べたように、戦時動員は、応募による「募集」と終戦末期の「徴用」とがあり、 全部をひっくるめて「強制徴用」というのは間違いである。
  3. 韓民族の「反日主義」の根源
    (1) 韓民族の「反日主義」の根源
    古代から韓半島は、四周の国から侵略を受けながら最終的に大陸国家中国の属国として朝貢体制のもと生き延びていく 地勢的宿命を背負っていた。 約500年続いた李氏朝鮮は、中国を宗主とし事大主義(大に仕える)に徹し中国と文化的同質性をもった小中華主義を維持していった。 李朝は、儒教の影響を受け「正を衛り邪を斥ける」という「衛正斥邪」のスローガンに掲げ、 自らを正と自認しその他の国を「夷荻」とする排他的攘夷思想を堅守した。 日本を野蛮な国と蔑視し「反日主義」は現代に始まってのではなく昔から潜在していた観念であった。
    (2)「恨」(ハン)という朝鮮人独特な精神文化
    「恨」とは単なる「うらみ」でなく、ある種の「くやしさ」を表し自分に対する「嘆き」として「うらみ」 を相手にぶつける精神文化という。加害者は悪であり、被害者は善であるという善悪の価値観で思考し、 日韓関係も加害者と被害者という立場は千年の歴史的が流れても変わらないという。
    (3)「反日」教育の徹底
    韓国では、小学校から大学まで徹底した「反日」教育を行われているため、国全体が反日に染っているといってよい。 日本に対しては何を批判しても構わないという風習ができあがり反日民族主義に染まっている。
  4. 日韓交流の今後
    (1)過激な権力闘争を繰り返す韓国の政治
    現在「共に民主党」の文在寅は、進歩派の「親北」で実質共産主義者である。スキャンダルを掴みメデイアと協同して 煽動・洗脳等世論操作により、朴槿恵大統領を弾劾訴追し退陣から逮捕まで追込んだ。 進歩派の「ロウソク革命」により文在寅大統領が誕生した。就任後 最高裁人事まで握り、 前大法院長と4名の判事を起訴逮捕したり更に検察司法改革として左翼系検察官を配置し保守陣営に浸食している。 大統領が司法、行政、立法の三権を占め、言論統制を行い独裁体制を進めているという。凄ましい権力闘争である。 従来「親日・米」の保守派と「親北」進歩派の勢力は概ね均衡しおり、10年ごとに政権交代が行われていたが、 文在寅大統領の独裁体制により、親北共産主義体制になる可能性は少なくない。 韓国では、「反日」については概ね保守も進歩も一致することが多いという。 政治のみならず民族としても「反日主義」の根が深いため、関係改善は難しい。
    (2) 文在寅大統領の「親北ー反日・米」による朝鮮半島統一
    統一には、北朝鮮よりか、韓国主体の統一かは、背後に米国と中国の確執が絡み又統一後の経済問題があり簡単にはできないだろう。 私のテニス仲間でソウル大学出身で日本男性と結婚し現在元早稲田大学教授婦人となった女性がいる。 彼女に半島統一について聞いてみたら、現在の北朝鮮との統一は反対ですときぱっぱり言った。
    (3)若い世代の交流と文化交流の促進
    多くの留学生の交流や若い就職希望者を受け入れ、日本の現在を実感として観察して韓国の実態教育と 現実の日本の姿を体験的に感じてもらい若い世代の交流を広める。又金大中大統領時代に盛んだった歌や踊り等芸能人 の文化交流は効果的であった。政治的な解決では先が見えないなか、 徐々に相互交流を進めて理解を深めていくしかないだろう。
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