「反知性主義」という言葉

石井俊雄
昨日、朝日新聞の朝刊に見慣れない言葉を発見した。それは、「反知性主義」という言葉だ。
最近できた言葉かといえば、そうでもない。 米国の歴史学者、 ホーフスタッターの著書、 Anti-Intellectualism in American Life, (Knopf, 1963). で使われており、2003年には、田村哲夫訳『アメリカの反知性主義』(みすず書房, 2003年)で、 邦訳もされているのだ。
要するに、小生が知らなかったに過ぎない。 小生が知らないということは、諸兄諸姉が知らないことにはならないが、 ここは敢えて、無駄を承知で、その言葉を紹介する目的で、この短文を掲載する。
中身は、すべて受け売りで、オリジナリティは無いが、ご一読くださればありがたい。 何故なら、わが国のみならず、世界で起こっている気狂いじみた出来事の原因が、この言葉を使えば、 相当程度説明できるからだ。 原因が説明できるということは、対策も可能というわけだから、未来への希望に繋がると思う。
朝日新聞の記事から、主要点(と小生が思う点)を抜粋しておく。
  1. 元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は対談で、 領土問題や歴史問題をめぐる国内政治家の言動に警鐘を鳴らした。 その中で使った分析用語の一つが「反知性主義」だ。 この言葉を昨年来、著書などで積極的に使っている。
  2. どう使っているのか。 「実証性や客観性を軽んじ、自分が理解したいように世界を理解する態度」だと佐藤氏は述べる。 新しい知見や他者との関係性を直視しながら自身と世界を見直していく作業を拒み、 「自分に都合のよい物語」の中に閉じこもる姿勢だ。
  3. フランス現代思想研究者の内田樹氏も昨年12月、反知性主義が「日本社会を覆い尽くしている」 とツイッターに書いた。 参考図書を読もうとしない学生たちに、君たちは反知性主義的であることを自己決定したのではなく、 「社会全体によって仕向けられている」のだと挑発的に述べた。
  4. 同じ月、米国の歴史学者ホーフスタッターの著書「アメリカの反知性主義」の書評をネットの 「書評空間」に寄稿したのが、社会学者の竹内洋氏(関西大学東京センター長)だった。 ホーフスタッターが同書を発表したのは半世紀前、邦訳されたのは10年前だ。 なぜ今光を当てたのか。「反知性主義的な空気が台頭していると伝えたかった」と竹内氏は語る。 ・・・なぜ、反知性主義が強く現れたのか。 「大衆社会化が進み、ポピュリズムが広がってきたためだろう。ポピュリズムの政治とは、 大衆の「感情」をあおるものだから。
以上だが、朝日新聞の記事、「反知性主義への警鐘」を見る方が手っ取り早いだろう。 また、その大本のネタが、週刊現代の特集記事(1月25日&2月1日合併号)であることも記しておく。
更に、本件に関する調査中に、 ネットで見つけた皮肉っぽい記事を紹介しておく。 興味ある方は、ご覧ください。
少しだけ、私見を記そう。
上記の文中、アンダーラインを引いた箇所を見て思ったことは、物理学の世界でも、 似たような考え方があるということ。 それは、「人間原理」と呼ばれている考え方だ。
人間原理(Anthropic principle)とは、物理学、特に宇宙論において、 宇宙の構造の理由を人間の存在に求める考え方。 「宇宙が人間に適しているのは、そうでなければ人間は宇宙を観測し得ないから」という論理を用いる。
自然法則とその中に現れる 物理定数が今知られているものよりわずかでも違えば、人間のような生命、 それを構成している原子、また太陽のような恒星、こうしたものが安定して存在することはできなかった。 つまり現在のような宇宙の姿はありえなかった。 それにもかかわらず、自然法則やその中に含まれる物理定数は、 人間のような高度な生命を生み出すのにちょうど適した構造になっている。 このことはファイン・チューニングと呼ばれる。 人間原理は、このファインチューニングという現象に対する説明を与える議論である。
前者(反知性主義)が、実証性や客観性を軽んじるという誤謬を犯すのに対し、 後者(人間原理)は、それらを放棄するという誤謬を犯すのだ。
でも、どちらも、「自分が理解したいように世界を理解する」という点で同罪だと思う。
西洋文明に特徴的なのは、この実証性と客観性ではないかと思う。 中国文明、イスラム文明、など、非西欧世界には、実証性と客観性が欠けている。 中国文明は実用を重視する世界だし、イスラム世界は神が支配している。 日本はどうかな?・・・中国からはいろんなものを学んだが、根っこのところでは相当違っているようだ。 どう思いますか?
 
 
 
 
 
 
 
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