仕分けロボットに想う

石井俊雄
昨日のニュースで、アスクルが配送の仕分けロボットを開発したと報じていた。
それで、思ったのは、これで、今まで仕分け作業で食ってた人は失業するだろうということ。 ロボットなど、産業技術の進歩は素晴らしいが、反面、人間社会を脅かす負の側面もあるのだ。
アベノミックスでは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が滴り落ちる(トリクルダウンする)」 とする経済理論または経済思想を掲げている。
このトリクルダウンをネット検索すると、次のようなことが書いてある。
トリクルダウン(trickle down)は浸透を意味する英語。
トリクルダウン理論とは「富裕者がさらに富裕になると、経済活動が活発化することで低所得の貧困者にも富が浸透し、 利益が再分配される」と主張する経済理論。
この理論は開発途上国が経済発展する過程では効果があっても、 先進国では中間層を中心とした一般大衆の消費による経済市場規模が大きいので、 経済成長にはさほど有効ではなく、むしろ社会格差の拡大を招くだけという批判的見方もある。
問題は、仕分けロボットによるコストダウンが、トリクルダウンに回るか、売価低減にまわるか、 設備投資・研究開発にまわるかであるが、企業は利益追求を目的としているのであるから、 競争力強化のため、売価低減か設備投資・研究開発に回るだろう。 トリクルダウンに回るのはその残りだけ。カラカラに搾った雑巾から最後の数滴を搾るようなものであろう。
以上のことから、我々は、産業革命時代、自動織機などの機械化に反対して、 打ちこわしなどの労働運動を起こした歴史を持っているが、 真にその時代の再来を経験することになりそう。 AIは、我々から知能労働を奪い、ロボットは筋肉労働を奪う、となるはずだからだ。
斯くて、富める者は増々富み、貧乏人はそのお零れに甘んずるという世界が展開することになる。
さあ、どうする?・・・これが私の素朴な質問だ。
どうすると言われても、一般市民としては、どうしようもない、というのが一般的な回答だろう。
では、質問を変えよう。 どうなると思う?・・・だな、私の質問は。
私の予想では、生活保護社会が実現すると思う。 今も生活保護受給者は、人口の2%程度あるが、それが数十倍に広がってメジャーになる社会である。 別名、最低限所得保障社会、というべきかも。 或いは、給付付き税額控除社会かな。
このマイナス所得税、これこそが国家が仕切るトリクルダウンの実現だろう。 そうでもしないと、この資本主義社会で、トリクルダウン(お零れ)が実現するはずがない。
いずれにしろ、付加価値税(付加価値の程度によって税率が決められる税のこと) は軽減税率で10%程度、標準税率で数10%のオーダーになることだろう。
問題は、それまでわが命が保つかだが、経験主義的立場から言うと、保たせたいというところである。 また、現実主義的立場からも保たせたい。理由は軽減税率適用の方だろうから。
少し追記しよう。 私は経済学者ではないので、トリクルダウン効果論辺の学説がどうなってるかは知らないが、 先に述べた「仕分けロボットによるコストダウンが、トリクルダウンに回るか、売価低減にまわるか、 設備投資・研究開発にまわるかであるが・・・」のところで、 仕分けロボットによるコストダウンが設備投資・研究開発に回った場合、 回った先の設備投資により雇用が生じるだろうし、 研究開発でも同様のことが言えそうである。
問題は、そのマイナス面(雇用喪失)とプラス面(雇用創生)の合計がプラスかマイナスかだろう。 具体的に言えば、仕分けロボットの導入によりa人が失職し、 その浮いた金で設備投資・研究開発が生じて新たにb人の雇用が生じたなら、結果の合計をeとして、 b−a=eがゼロなら、仕分けロボットの導入による雇用状態への影響はゼロ、即ち、問題はないとなる。 同様に、e<0なら、雇用減であり、e>0なら雇用増である。
だが、問題はそう簡単ではなさそう。何故なら、稼働時間rを考慮していないからだ。 この場合、仕分けロボット導入により可能になる稼働時間延長が、新たな需要を生む可能性を考慮しなければならない。 例えば、仕分けロボット導入前は労働環境などの観点から夜間の仕分けを制限していた場合、 ロボット導入により夜間の仕分けの制限は無くなるというようなことだ。その結果、取扱量が増えることが想定される。 取扱量が増えることから雇用増に繋がる可能性があるからだ。
斯くて、仕分けロボットによるコストダウンに伴う効果をEとすると、Eは、a、b、rの関数となる。
式で書けば、E=f(a,b,r)となる。
更に、rを考慮するなら、人口増n(減もあり得る)を考慮しないといけないことになる。
であれば、E=f(a,b,r、n)となる。
ここまでは素人でも見当がつかないでもないが、その後の有意な解は、 コンピュータによるシミュレーションに期待するしかない。 AI(Artificial Intelligence:人口知能)の出番だ。 私見ながら、AIにとっては得意分野ではないだろうか。 何故なら、結果の評価がプラスかマイナスで表せるから評価が容易だからだ。 でも、得られた解がどのような理由でそのようになったのかは、人間には理解(評価のこと)できないだろう。 だから、解を見ても疑心暗鬼で呆然とするしかあるまい。
・・・だが、直観では、E<0ではないだろうか。私は楽観的な方だがそう思う。 若しそうならば、Eの分を最低限所得保障費として予算化することになるだろう。 その財源は、付加価値税である。
このEの分の最低限所得保障費、これこそ真のトリクルダウンと言えるだろう。 そのような目に見えるものが無いと、トリクルダウンは単なるおとぎ話に過ぎなくなる。 滴り落ちるとか、お零れとか、当てにできないほら話である。
更に、少し追記しよう。
以上、変数がa,b,r、nの4個の場合を論じた。 しかも、ある仕分けロボットという脅威要素だけを対象にしている。 即ち、ある仕分けロボットをiとすると、
i=f(a,b,r、n)
としているわけだ。 更に、時間軸tを考慮すれば、
i=f(a,b,r、n、t))
となる。さらに、仕分けロボット全体の影響は、
siwakerobot=ΣEi
となる。一般に脅威要素kを対象にその全体を論じるなら、
total=ΣEk
でなくてはいけない。 更に、各脅威要素間の相互作用もあり得ることを考慮すれば、 上の式のように単なる足し算だけで済ませられるかどうかの問題もある。
問題だらけだが、そこいら辺のことは、政治経済学者、数理統計学者、心理学者、など専門家の英知とAIのコラボで、 Etotalの計算式モデルができるのではないかと思っている。
この結果は、Etotal<0なら、 Etotalの分を最低限所得保障費として予算化する際に使われるだろう。 その財源は、付加価値税である。 Etotal>0なら、最低限所得保障費は据え置かれ、付加価値税の低減に使われるだろう。 巷に仕事はあるのだから自助努力は報われるはずだからだ。
だが、付加価値税税率の変動は、経済活動のコスト高に繋がるから、 最低限所得保障費の方の変動で吸収される可能性が高い。
大雑把に言えば、このようなストーリーが想定される。・・・失業で路頭に迷う心配が払拭され、よかったでしょう! 生きる希望が湧いてきたというところです。・・・頑張らなくちゃ!お互い。
追記:「果物をロボで収穫」(毎日新聞7月9日朝刊)から
抜萃1:農林水産省所管の研究機関は8日、2020年度までにリンゴやナシといった果実の無人収穫ロボットを開発する計画を明らかにした。 機械化に適した樹形の栽培技術も研究する。農業ロボットで農作業を大幅に省力化し、果樹経営の大規模化を後押しする。
抜萃2:果樹の品質や収穫量を落とさずに、機械で効率よく収穫しやすいように枝分かれする樹形に栽培する技術も開発する。
抜萃3:電動車両は、収穫ロボ以外にも、農薬の散布や草刈りの機械を牽引して作業を無人でできるようにする。
抜萃4:機構(研究の代表機関は農業・食品産業技術総合研究機構)の研究代表者の草場新之助氏は 「最先端の機械を使えば、農作業が楽にできる。果樹経営の魅力を若い世代に発信したい」と話している。
以上が、主要な点の抜粋だが、そんなにいいことばかりだろうか心配になった。
問題点1:「機械で効率よく収穫しやすいように枝分かれする樹形に栽培する技術も開発」とあるが、 神をも恐れぬ所業とも言えるのではないか。
問題点2:「最先端の機械を使えば、農作業が楽にできる。果樹経営の魅力を若い世代に発信したい」とあるが、 果たして人間は、楽したいのだろうか。
問題点3:「農業ロボットで農作業を大幅に省力化し、果樹経営の大規模化を後押しする。」とあるが、 確かに、コストダウンに伴う効果Enougyouroboが期待できるだろう。 だが、機械化で失業する人も生じるのだ。即ち、本文で指摘した脅威要素kの一つが増えることになる。
機械化に伴う生産量の増大と有閑人の増加、これ、どう折り合いをつけるというのだろう。 ローマ帝国がパンとサーカスで滅びたように、長続きする世界ではないように思うが、 人類は、果たして、解決策を見つけ出せるだろうか。 ・・・言えることは、「人はパンのみにて生きるに非ず」という言葉が重みを増すということだ。(2016/07/09 追記)
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