書斎とサロンと旅行と

 
石井俊雄
昔、「男子たるもの書斎を持つべし」という言葉を聞いたことがある。 若い頃はピンと来なかったが、現役を退いてというか、或いは押し出されてというかして隠居の身分になった今、 家族の者たちから距離を置く空間として書斎は重要だ。 そうでなければ、愚にも付かないテレビ番組の拷問に遇うことになる。
「愚にも付かない」と書いたが、この言葉、口で言うのは屡(しばしば)でもいざ漢字かな混じり文として書くのは簡単ではない。 躊躇してしまう。漢字が分からないからだ。
そこで、ネットで調べることになるが、「ぐにもつかない」で検索すると出てきた。「愚にも付かない」だ。 同時に類語として、「馬鹿馬鹿しい」、「ちゃんちゃら可笑しい」、「馬鹿らしい」、「阿呆らしい」、「阿呆臭い」、「暇な」、「くだらない」、 取るに足らない」、「詰まらない」などがあった。
でも、そんなテレビが小生の大きな情報源。どっぷり浸かりはしないが頼りにしている。
そのテレビで、先日(2月9日)、面白い言葉を聴いた。「創発」という言葉だ。 なんだか少し左掛った月刊誌の題名のようだが、それとは裏腹に内容的には面白い概念を表す言葉だった。
それで、俄かに興味を発し、ネットで調べたり、聊か、本など探してみた。
ここで書斎の出番となる。他に邪魔されず思索の時間が得られるのだ。 その結果を書いてみよう。
先ず、ネットで調べると、ウイキペディアに出ているが、 その中から肝心な処を抜き出すと次のようになる。なお、そのページの右下にある「セル・オートマトン、ライフゲーム」、とても面白いのでよければ見て欲しい。
創発のキーワードは、「個別は単純だが、全体では個別の要素の振る舞いからは予測できないようなシステムが構成される。」と云うことだろう。 つまり、1+1=2ではなく、1+1>2ということだ。卑近な例で言えば、「独り飯は食えないが、二人飯は食える」かな。
また、もう一つの例を云えば、心臓などが考えられる。心筋細胞は延びたり縮んだりの単純な動きしかしないが、それが集まって心臓となると、 個別の心筋細胞が同期して動くポンプになる、というように、個別の要素の振る舞いからは予測できないようなシステムが構成されるのだ。
政治学や経済学への応用も期待できそう。 例えば、中国の尖閣問題への反応などが考えられる。国民一人一人の動きが中国という集団の行動として現れるからだ。
また、経済学では、一人一人の経済行動がその国の景況感、あるいは株価などとして現れるからだ。
もう一つ、雑談の効用が説明できるかも知れない。 何故なら、一人一人の単純な発言が、集団として個人の活性化につながるからだ。
そのように、「創発」という概念を識れば、別の世界が見えてくることが期待できそう。 更に、解明されれば、今まで経験でしか解からなかったことが解かるようになるし、経験でも知らなかったことが解かるようになるかも知れないのだ。
 
そんなわけで、単純な解を求めて図書館へと行った。
そこで発見したのは、「知性の創発と起源」(鈴木博昭編)という本。 借りて読んだがさっぱり解からない。トンチンカンだ。 創発の本質が解明されてない所為だろう。多分、暗中模索ってとこで書いてる本人も本質の何たるかを知らないのだ。 無理もない、何故なら、例えば脳機能の解明というようなレベルのことだから。
でも、小生の勘から言うと、この言葉、段々と広まってくるのではないかと思う。 そしてこの創発システムが解明されるとき、人類は、「火」、「文字」、「機械」、「原子力」、「コンピュータ」、「インターネット」に継ぐ大発見を手にするのだ。
以上は小生の書斎の中でした勝手な妄想だ。
しかして、書斎は妄想を生んだ。
では、書斎の外、家族と共に過ごす居間や、友人・知人と接し合う広場、所謂サロンは何を生むのだろう?・・・それは、創発の生み出す雑談だ。
我々には、書斎とサロンという二つの快適空間がある。これからの人生、愉快に過ごそうではないか。旅も加えたりして。
しかして三つとなった快適空間を行ったり来たりしよう。音楽でも聴きながら
マドンナもいい、歌上手いし、音外さない。
 
 
 
 
 
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