腰痛2800万人社会の時代
石井俊雄
7月2日のNHKクローズアップ現代で、「腰痛2800万人社会の時代」というのをやってました。
そのポイントを書き出すと、次の通りです。
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今や腰痛に苦しむ人は全国で2800万人といわれる中、腰痛の治療法に関しては、通説による治療法が必ずしも正しくないことが分かり、日本整形外科学会、日本腰痛学界は「腰痛に関するガイドライン」を編纂した。
- 腰痛の無い成人の76%に椎間板ヘルニアがあるが、その殆どが腰痛を発症していない。
- 腰痛のある人で、原因が特定できる人は15%、出来ない人が85%。
- 原因が特定出来ない人の場合、大概はストレスに因る脳機能の変化が腰痛の原因である。
- 前項の脳機能の変化とは、脳の中にある「側座核」の機能が変化することである。
- 「側座核」の正常な機能は、身体のあちこちから痛みの信号を受け取て、脳各部にその痛みを和らげる物質を送り出すこと。
- ストレスにより機能変化した後の「側座核」の機能は、痛みを和らげる物質が減るのというものである。
そのことにより、ちょっとした刺激でも痛さを感じてしまうことになる。
- 以上から、原因が特定出来ない人の場合の腰痛の原因は、心理社会的要因(所謂、ストレスのこと)と言える。
即ち、身体的には何の問題もなくても、脳が痛いと感じるから痛いのである。
- 前項と同じことだが、痛みとは、頭で記憶されているものである。そして腰痛とは何らかの原因でその記憶が呼び出され、
体がそれに反応して起こす防御反応である。
- 腰痛の原因は心理的ストレスが大きいので、うまく付き合っていくことが出来ると理解することが大事である。
- 腰痛にならないようにするには、ウオーキングやストレッチなど全身運動がよい。
私感
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腰痛の85%は一言で言えば気の病ということになってしまうが、意外な結果と言わざるを得ない。
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番組では、(9)で記した「痛みとは、頭で記憶されているものである。そして腰痛とは何らかの原因でその記憶が呼び出され、
体がそれに反応して起こす防御反応である。」としたとこまでだったが、脳はその防御反応として痛みを発するだけだろうか。
もう少し、何かをしてもよさそうな気がする。
例えば、痛みを発したと脳が判断した部位に対し何かの物質(たんぱく質だろうが)か電気信号を送りつけるとか。
少なくとも、防御機構は双方向のネットワークで形成されていると思うので、何らかのやりとりがあるはず。
そのネットを使ったチャット(やりとりのこと)がどのようなものか知りたい。
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もう1つ知りたいのは、「何らかの原因でその記憶が呼び出され・・・」としたが、その呼び出しのメカニズムが知りたい。
コンピュータでは、例えば、「痛みの記憶」というプログラムがメモリに記憶されていたとして、その記憶されたものに起動を駆けないと稼動しない。
稼動しなければ記憶されたままだから悪さはしない。
それと似たようなことが脳の中で起こっているとしたら、起動方法が問題になる。そこを狙って潰してしまえば「痛みの記憶」プログラムは起動することはない。
・・・そんな夢のようなことが起こればいいね。名付けて痛み記憶プログラム起動阻止療法だ。
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余談ながら、この「起動」という考え方は、遺伝子の働きを解明するというレベルでもキーになる重要なメカニズムのようだ。
遺伝子も、色々な機能を持つ遺伝子が一次元の線上に並べられている記憶装置と言える。
その中から、必要に応じて必要な遺伝子に起動を駆けるという活動が行われている。
例えば、人の誕生もその例だ。たった1つの細胞(卵子)から60兆もの細胞を組み立てるプログラムの起動シーケンス(順序のこと)、鍵は起動方法だと思う。
解明されれば割合簡単なメカニズムだと思うがとても面白いと思う。
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もう一つの方法は、脳は、「五官」と呼ばれる五つのセンサーと、記憶というデータベースと、
神経系という回線ケーブルからなる双方向通信ネットワークの司令塔と考えられる。
恐らく、神経系という通信回線は使えば使うほど太くなる性質のものだろう。
だから、腰痛患者が痛いと思えば思うほど当該通信回線は太くなりますます痛くなると思われる。
かかるネットワークにおいて記憶を消すには、脳内の回線ケーブルをカットすることが有効ではないだろうか。
ある程度太らせておいてレザーでピンポイントカットすればいい。名付けて通信回線切断療法だ。
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更に、もう一つの方法は、前項のネットワークにおいて記憶を消す方法として、回線ケーブルをカットする替わりに、
フィルタを咬ませて痛みの信号をカットすればいい。但し、カットすべき痛み信号を特定するという技術開発が必要だが。
それは、1.項で記したチャットが分れば分るだろう。
名付けて通信回線情報選別抑制療法だろうか。
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以上、素人が考えても、いろんな療法のアイデァが浮かんでくる。ということは、科学技術の進歩はまだまだサチることはないということ。
むしろ端緒についたレベルだろう。特に、脳科学に関しては。
若い人にとっては宝の山だ。
西部開拓時代のカリフォルニアのゴールドラッシュ、大航海時代のスペインやポルトガルから見た南米大陸のようなもの。
フロンティアは存在するしあとは挑戦する精神あるのみだ。小成に甘んじる勿れ。
腰痛の85%は気の病だがその実体は痛みの記憶だ。とすれば記憶がゼロでは困るが多すぎるのも困る。
要するに知りすぎてはいけないことになる。
そういえば、昔、ヒッチコックの映画で「知りすぎていた男」という映画があった。その中で、重要な役割を果たした歌を聴いてお別れしよう。
「ケ・セラ・セラ」だ。
この歌、アカデミー賞の歌曲部門を獲ったが、歌ってるドリス・デイ、この曲をもらったとき歌うのを嫌がったそうだ。
コメディータッチのは好みではなかったのだろう。
ヒッチコックはもう1曲、バラードの歌を挿入してなんとかこの歌を歌わせたとか。
結果は、ヒッチコックの予想通り大ヒットしアカデミー賞までゲットしたが、バラード曲の方は啼かず跳ばすだったとか。(この段、5日のNHK「ハリウッド白熱教室」より)
矢張り、ヒッチコックという人、音楽の感性も相当なものだったことが分るエピソードではないだろうか。
そういえば、西部劇で有名なジョン・フォード監督も音楽の使い方が上手い。
小生が思うだけでも、「静かなる男」、「アパッチ砦」、「黄色いリボン」、「荒野の決闘」、「騎兵隊」、「駅馬車」などなど多数だ。
日本映画では木下恵介監督だろう。
その中で、「静かなる男」のサウンド・トラックから、"The Isle of Innisfree"を聴こう。
映画では、モーリン・オハラが歌ってるが実際は吹き替えだろう。その歌手の名前は知らないが素敵な声だ。
しかし、若しかしたら彼女の声かもしれない。声が似てるから。もし自声だとしたら、歌うセンスが素晴らしい。
演技力のある女優さんでも中々こうは歌えないと思う。
この歌は伝統的なアイリッシュ音楽(ケルト民謡)のようだ。訳すれば、「イニスフリーの小島」だろうか。
数多い民謡の中からこの曲を選択するところにジョン・フォードの非凡な音楽センスをみることが出来る。
それにもましてモーリン・オハラの美しさが際立っている。
小生がその美しさを意識したのは、「船乗りシンドバッドの冒険」(1947年)を観たとき。
小生、10歳の頃だ。1920年生まれだから小生にとっては相当お姉さんだったわけだが。
でも、だからと言って小生が早熟だったわけではない。私が責められるとしたらそれは知っていたからに過ぎない。
そのくらい美人だったと言いたいわけだ。諸君もその証拠を見たら理解するだろう、
自分が如何に無知だったかを。
無知なるものは幸せだ。
それに比べ、小生は以来夢みる人生が続いている。老いてもだ。
このモーリーン・オハラ演じるメアリー・ケート・ダナハーがピアノで弾き語るシーンで歌われる歌の歌詞を書いておく。
Oh, Innisfree, my island, I’m returning
From wasted years across the wintry sea.
And when I come back to my own dear Ireland,
I’ll rest a while beside you, gradh mochroidhe.
"gradh mochroidhe"の意味は、英和辞書には書いてない。どうやらゲール語で、意味は、
"love of my heart"(心の恋人)。従って、イニスフリー島ということのようだ。
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