科学と国家

石井ト
最近、日本学術会議が委員任命見送りの件でホットだが、小生が、日本学術会議に違和感を感じたのは、 日本学術会議が2017年には「軍事的安全保障研究に関する声明」なるものを出して、防衛装備庁などから研究費を受け取ることを阻止したこと。
テロ、サイバー攻撃、強権国家の台頭、など世界が複雑化している中、75年も前の嫌戦思想を引きずったままの日本学術会議の考え方が解らなかった。 だから、今日、時間もあったので、その声明文読み解き、その妥当性を探ってみた。
  1. 対象の文書
    対象の文書は、「軍事的安全保障研究に関する声明」である。
    「軍事的安全保障研究に関する声明」の全文は ここをクリックのことだが、その中からポイントの部分をピックアップすると、次の通り。
    • 「声明の経緯」部分
      日本学術会議が 1949 年に創設され、1950 年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を、 また 1967 年には同じ文言を含む「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発した背景には、 科学者コミュニティの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生じることへの懸念があった。
    • 「2つの声明の継承」部分
      近年、再び学術と軍事が接近しつつある中、われわれは、大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、 すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認し、 上記2つの声明を継承する*1
    • 「研究の適切性」部分
      研究の適切性をめぐっては、学術的な蓄積にもとづいて、科学者コミュニティにおいて一定の共通認識が形成される必要があり*2、 個々の科学者はもとより、各研究機関、各分野の学協会、そして科学者コミュニティが社会と共に真摯な議論を続けて行かなければならない。
  2. 批判
    それは主に、次の2点。
    • 上記*1の太字の部分
      「軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認し、 上記2つの声明を継承する。」とあるが、「国家の安全保障」と「学問の自由及び学術の健全な発展」はどちらか一つをとればいいというものではない。 どちらも必要である。
      国が滅びては研究の自由も意味を為さない。また、研究の自由が損なわれては研究の質が落ちる。 だから、どちらも必要なのだ。
      昨今の世界情勢に鑑み、日本学術会議の見てる世界は現実無視、唯我独尊で、偏狭過ぎると言わざるを得ない。
    • 上記*2の太字の部分
      「研究の適切性をめぐっては、学術的な蓄積にもとづいて、科学者コミュニティにおいて一定の共通認識が形成される必要があり、・・・」とあるが、 あたかも国家の中に別の国家があるような話だ。 科学は国家の知性。国家は科学の揺籃だ。従って、科学者コミュニティは親国家的でなければならない。
    • 憲法23条:学問の自由との整合性
      憲法23条に「学問の自由は、これを保障する」とあるが、 日本学術会議の2017年の「軍事的安全保障研究に関する声明」は、これと整合しているのだろうか。
      一方で学問の自由を唱え、片方で研究の不自由を課するのは矛盾している。何故なら、学問は研究を含むからだ。 集合論的に言えば、集合Aを自由とし、集合Aの部分集合たるA'を不自由とするのは、 集合論的に成立たない論理だろう。声明は論理的に破綻している。
  3. 批判の結果生じる疑問
    批判することにより生じる疑問が次の2点。
    • 日本学術会議の世界認識はどのようなものか。
    • 国の役割をどう認識しているのか。
    • 学問と研究は別のものとした上での声明なのだろうか。
     
  4. 小生の考え
    現実世界と国の役割について、小生の考えるところは次の通りだ。
    • 現実世界は、嘗ての陸海空に加え宇宙空間、サイバー空間、などへの戦場の拡がりつつあると共に、軍需・民生とも先端技術時代に入ったと思う。 栄枯盛衰は世の常ではあるが、先端技術に遅れをとれば、たちまち衰退する厳しい世界である。この世界では、2番目では駄目で、1番でなければならない。 2番では従属国だ。それが嫌なら1番の技術力で世界に与力することが所要。
    • 国の役割は、国の独立を護ること。国民の命を護ること。
     
  5. 提言
    学術会議の考え方は不明だが、学術会議向けに提言を試みてみる。
    • 現実世界を直視し、独善を脱し、わが国が1番の技術力を持つことを志向すべし。
      先端科学技術世界一を目指して国を導く(提言する)くらいの大風呂敷を広げるべし。
    • 国の役割は、国の独立を護ること。従って学術会議として安全保障に与すべし。
コメントはこちらへメールして下さい。その際、文中冒頭に「HPコメント」と記して下さい。 メールはHP管理者へメールしてください。
 

<コメント欄>   当欄は上記のメールをコメントとして掲示するものです。