日本学術会議の問題

令和2年12月1日
山 下 永 二
菅総理が10月1日日本学術会議の推薦した新会員6名を拒否した問題をめぐり、政府と学会との間に混乱が起こっている。 政府の任命拒否によって日本学術会議の実態が明るみになった。
日本学術会議について、名前は聞いたことがあっても学者の集団という位のことしか知らなかったが、日本共産党の機関誌「赤旗」がスクープして判明し、 マスコミや立民党や共産党が「学問の自由」が侵害されたと騒ぎだして、知れ渡ってきた。
  1. 日本学術会議とは一体どんな組織だろう
    会議は、昭和24年に創設され内閣総理大臣直轄の組織であり、210名の会員と約2000名の連携会員で構成され、6年の任期で3年毎に半数任命替え再任される。 身分は会員が特別職公務員で連携会員は一般公務員である。年間約10億円の予算で運営している。
    役割は、政府へ政策勧告、国際交流、科学者のネットワーク構築、科学の世論啓発がある。
  2. 学術会員6名の任命拒否について
    過去に任命拒否は無かったが「会議」側に偏向があり、政府から是正勧告されたことは数回あった。 総理大臣の任命拒否の有無とその理由が問題になっているが、総理直轄の公務員であれば、当然 総 理大臣に拒否の権限は有する。 拒否の理由を「総合的、俯瞰的に判断した」述べているが、確かに分かりにくい。 菅総理は「偏りがある」とまでは言及しているが、若しかすると中国、米国の外国に「秘」に触れる事があるのかも知れない。 理由を率直に述べれば、個人のプライベートに関わり、また政治的イデオロギーに関われば、更に騒ぎは拡大して収まらないだろう。 拒否された6名は、政府の政策に反対活動をとっていることは分かっている。 その内3名は、設立当初から共産党の指導の下にあった「民主主義科学協会」に所属していた。今まで反政府活動に対しても甘く対処していたのだろう。 企業であれば、社長の事業経営に反対行動をとれば、当然クビになるだろう。
  3. 日本学術会議のどこが偏向しているのか
    総務省の調べによると、
    • 国立出身大学所属者が45%を占め、私立大学所属は24%と偏っている。
    • 構成分野の人員分布が偏っている。
      @人文・社会科学 A 生命科学 B 理学・工学の3分野の分かれ、法学、政治学者は約8千人に対し会員16名、電気、 電子学者・研究者は約15万4千人に対し9名であるという。任命拒否された6名は皆 文系だった。
    • 人文・社会科学の共産党に影響を受けている左派学者がリーダーシップをとっているという。 平成23年7月 の元会長広瀬清吾(東大法社会学教授)氏は、赤旗に何度も意見陳述した左翼系 シンパで次の大西隆(東大名誉教授)氏は元東大全共闘の活動家だった経歴で平成23年10月 から二期6年会長を務め、自然偏った人事や思想に陥ることは目に見えてくる。
    • 偏向の原因は、日本学術会議設立当初からあった。GHQ(米国占領軍総司令部)は日本無力化 を意図して、会員メンバーに日本の民主勢力を取り入れ、そこに日本共産党系及びシンパが浸 透し当時会員約30名を占めた。以来政府と日本学術会議とは対峙し、一時は廃止の意見もあっ たようだが、イデオロギー政治闘争が繰り返し行われた経緯がある。しかもこの10年来 政策提言は行われていないという。
      国家機関として政府と対立するようであれば、独立して民営化すればよい。外国のアカデミー は、国から独立して政策提言している。その方が政府も学者にとっても効果的である。
     
  4. 日本学術会議の「戦争目的とする科学の研究に協力しない」三度の声明
    • 第一回(昭和25年4月)、科学者達は戦争の悔悟と反省から敗戦後の占領下で米国の非武装化政策に同調した声明であったろう。 国民も戦争嫌悪感の意識が支配し納得したであろう。
    • 第二回(昭和42年10月)は、70年安保闘争前で左派系活動家が60年安保闘争に続く運動していた時代背景だった。
    • 第三回(平成29年3月)は、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」に対する牽制であっ た。前二回の「戦争」の概念は、侵略戦争を想定していたであろうが、現在は、「戦争をいかに 防ぐか」、「戦争をいかに抑止するか」という国家安全保障の観点から考察しなければならない 時代に変わった。国際情勢は激変し、テロ紛争、民族紛争、弾道ミサイル、核武装化、サイバ ー攻撃、宇宙戦まで拡大し多様な戦いが展開しており、まして 極東アジアにおける日本の安全 保障環境は危機を感じるような時に、日本だけが内向きになっていては、諸国が推進する安全 保障に追随できず、日本の防衛は不可能である。
     
  5. 日本学術会議の国際交流は中国に偏り過ぎる
    • 中国は、習近平が主席になった直後の平成27年に、中国ハイテク戦略「中国製造2025」を発表 した。半導体や宇宙開発、5G、AI等軍事技術を含めた技術開発に世界中の知恵と技術を集め、 米国に追いつくためアカデミーの中国工程院と中国科学技術協会が連携して国家命運をかけて 国家戦略を構築した。中国は、「軍民融合」政策をとっているので、中国工程院は、人民解放軍 の軍事科学院と直結している。
    • 日本の高い科学技術に注目していた中国科学技術協会は、同年9月 日本学術会議 大西隆会長と 「協力覚書」を締結した。日本の防衛協力に反対し中国の同協会と締結するという矛盾は、国 際軍事情勢を理解してないか、無視したとしかいいようがない。日本の国家機関とは思えない。
    • 習近平主席が平成20年に創設した「千人計画」にも日本学術会議は関わっているという疑いが ある。「千人計画」とは、海外のハイレベルの人材を招致し科学研究、技術革新における国際的 専門家を認定し採用するための計画・制度である。採用されたら、高額の資金援助を受けられ る。これに参加している日本人学者は30数名、研究所等団体10数社がある。
     
  6. 軍事学と軍事技術について
    • 軍事学は、人文科学、自然科学、社会科学の分野があり、国家安全保障、戦争、軍事力、戦略、 戦術、統率、戦史、兵器等広範囲に及ぶ軍事や国防を研究する学問である。諸外国では国家存 亡のため、凌ぎを削って研究している。日本では防衛学といい、先進国は多くの大学で研究し ているが日本では防衛大しかない。日本学術会議の声明の影響は大きく、日本を軍事音痴に陥 れてしまった。
    • 軍事技術は、軍事を支援する科学技術であり、研究開発、生産、整備まで含まれている。古来 から科学技術は、戦争の歴史に沿って進歩してきた。諸外国では国家の安全と存続のために、 軍事に最先端の技術が採用されている。必要悪といえるかもしれない。軍事のための科学技術 もあれば、軍民境目のない一般の最先端科学技術もあり、軍事技術は、過酷な環境と人体の安 全のため高度な技術が求められるため技術は進化していく。従って軍民共用して一般社会にも 適用され社会発展にも寄与している。
     
  7. 軍事音痴では平和を築けない
    戦争はこの世で避けられないのであれば、軍事を学び、知ることによってこそ、戦争を予防し 防止できるし、世界平和に貢献できる。軍事を避け軍事音痴では、平和の構築は困難で防衛は 危険である。
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7571問題
石井ト
日本学術会議を見ていると、まるで、今流行りの引き籠りだ。 浮世の荒波には身を曝さず目をつぶり、親の盾の中に引き籠って奇麗ごと言ってるように見える。 学術会議の誕生は1949年だから、戦後75年の国家の71年問題、即ち「7571問題」と言えるだろう。(2020/12/02 23:34)