花の後先

H24/4/16
石井俊雄
井の頭公園に行ってみた。4月6日と今日4月16日。
6日は咲き始めの8分咲き。今日16日は8分とおり散っていた。
花の後先を写真で対比するのも面白いかなと思って、前後の写真を掲載します。よかったらご覧ください。
 
八分咲きの桜、井の頭公園での遠景です。(4月6日撮影)
 
 
八分とおり散った桜、井の頭公園での遠景です。上の写真とほぼ同じアングルの写真です。(4月16日撮影)
 
 
 
 
桜の花の接写。(4月6日撮影)
 
上と同じアングルの写真です。(4月16日撮影)
(この写真は今日撮ったものですが、カメラの何処か変なところを押したらしくて、写真に書き込まれた日時が違っています。)
 
 
過去と現在を対比させた写真が2枚。 否応なしに時間を感じます。
和歌では、ご存知、小野小町のが時の移ろいを詠っています。
花の色はうつりにけりないたづらに
わが身よにふるながめせしまに
また、散る花を歌った百人一首にも採られた紀友則の和歌が静かな時の流れを詠います。
ひさかたの光のどけき春の日に
静心なく花の散るらむ
古今和歌集には散る花を詠った和歌が沢山ありますが、その中から2首を抜き出してみました。
うつせみの世にも似たるか花ざくら
咲くと見しまにかつ散りにけり
春雨の降るは涙かさくら花
散るを惜しまぬ人しなければ
最初の和歌はよみびと知らず、次の和歌は大伴黒主の作です。 六歌仙の中で、小倉百人一首の撰からはずれたただ一人がこの大伴黒主で、 古今和歌集の仮名序には、「そのさまいやし、いはば、たきぎおへる山人の花のかげにやすめるがごとし」とあります。 小生は中々いい和歌だと思うのですが、紀貫之はどこかが気に入らなかったのでしょうね。
もう1首、黒主の和歌を書いてみます。
鏡山いざ立ち寄りて見てゆかむ
としへぬる身は老やしぬると
歌意は、「鏡山にちょっと寄って私の姿を映していこう。年月を経たわが身が老い込んでいはしないかと思って。」というもの。
鏡山とういう山の名前を受けた機知に富んだ作品かと思うのですがどうでしょう。 貫之の評、「そのさまいやし・・・云々」は、この川柳的なセンスを指したものかもしれません。
また、時の流れに感じるのは洋の東西を問いません。 ご存知のミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」での挿入歌「サンライズサンセット(SUNRISE SUNSET)の歌詞を思えば明らかです。 その中のコーラス部分を抜書きしてみましょう。
(男性コーラス)
日は昇り、日は沈み
日は昇り、日は沈み
慌しく日々が流れ去る
蒔いた種が、一晩でヒマワリに変り
私たちが見ているように咲き誇っている

(女性コーラス)
日は昇り、日は沈み
日は昇り、日は沈み
慌しく年々が流れ去る
季節は移り変わる
喜びと涙を湛えてながら

(すべて)
日は昇り、日は沈み
日は昇り、日は沈み
慌しく年々が流れ去る
季節は移り変わる
喜びと涙を湛えてながら
詳しく知りたい方はここをクリックしてください。 音楽もきけます。
クリックしたら、出てきた画面の中に三角のスタートマークを持つ3つの小画面が出ますが、 その2つ目"Chava's Ballet Sequence"(チャバのバレー場面)の音楽、とても素敵です。 ヴァイオリンの演奏はアイザック・スターンです。流石ですね。
バレーをこのようなアングルで撮った映像はこれが初めてではないでしょうか。素晴しいですね。 特に目を引くのは、バレーを踊る娘達のウエストの細いこと。まるで、スズメバチのよう。
コスチュームといい、振り付けといい、カメラアングルといい、音楽といい、ヴァイオリンといい、素晴しい。 こんなの見たことないですね。この監督さんの才能を感じます。
チャバは、牛乳屋を営むユダヤ人一家の三女の名前です。
また、「屋根の上のバイオリン弾き」という題名は、昔ローマ皇帝ネロによるユダヤ人の大虐殺があった時、 逃げまどう群衆の中で、ひとり屋根の上でバイオリンを弾く男がいたという故事にちなんだユダヤ人の不屈の魂の象徴だそうです。
 
"Chava's Ballet Sequence"を見ている間につい時が経ってしまいました。
時間、こればかしはどうしようもありません。我々にできることは忘れてしまうか待つことだけ。 手なずけようなんてとんでもない、せめて和歌でも詠んで慰めとしましょう。
あらためて時の流れを思ふかな
咲いて散りたる花の後先
・・・癒されましたか?
駄目ですか!・・・・それなら、忘れることですね。
「…お嬢さん。この娑婆には辛い事、悲しい事がたくさんある。だが忘れるこった。 忘れて日が暮れりゃあ明日になる。(空を見上げて)ああ、明日も天気か」
長谷川伸原作の映画「関の弥太っぺ」の名台詞です。 ・・・・お嬢さん役は十朱幸代、弥太っぺは中村錦之助でした。
・・・何っ、忘れてしまった!・・・忘れる才能があればしめたもの、明日は天気になるでしょう。
 
 
 
 
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