尾瀬敗退記

石井俊雄
先日、17日(水)、尾瀬に行った。
尾瀬は予てからの憧れの地ではあったが、日帰りは無理、宿泊するなら山小屋で雑魚寝、と聞いていたので眠れるかどうかが心配で諦めていた。
だが、クラブツーリズムのパンフレットを見ていたら、日帰りバスツアーで尾瀬があったので、これ幸いと応募したのだった。
案内によれば、鳩待峠までバスで行き、そこからは3.5時間の自由行動となっている。 だから、鳩待峠から歩いて山ノ鼻までなら楽勝だと思い応募した。そして内心目標を山ノ鼻と決めた。
でも、結論を先に言えば、小生の体力では日帰りは無理だった。 原因は、思い込みによる目算が現実と大きく外れていたからだ。
目算外れの数々は次の通りだ。
  1. そもそも尾瀬とは湿地帯であるから、高低差はなくフラットだと思っていた。だが実際は、鳩待峠〜山ノ鼻間は200mの高低差があった。
  2. 鳩待峠でバスを降りたら直ぐ尾瀬ヶ原の湿地帯に出られると思っていたが、実際は、山ノ鼻まで3.3km、更に山の鼻から少し行かないと尾瀬ヶ原に出られなかった。
  3. 鳩待峠でバスを降りたら直ぐ眺望も広々と広がっているし日光きすげや杜若のような花も咲き乱れていると思っていたが、 実際は、鳩待峠〜山ノ鼻間は谷筋を下る道なので眺望は利かず景色も通常の山と同じだった。
  4. 小生は、動作はしっかりしているからずっこけることはないと思っていたが、実際は、木道の階段を踏み外し向こう脛を強打してしまった。
私は細かい計画はしない。ターゲットを決めたら概ね突進する方だ。そのことは初めから承知しているので結果は甘んじて受けようと思っている。 でも、今回のは我ながら聊か研究不足だったと思う。やはり、今後は微調整可能な範囲で決心するようにしようと思う。
そんなわけで、山ノ鼻までは行かずその少し手前で引き返したが、そのときの写真を数枚掲げますので、良かったらご覧ください。
 
 
ヤフーの画像からゲットした尾瀬辺りの地図だ。
左下の鳩待峠までバスで行き、後は北方向(地図上では上の方)へ歩いて山ノ鼻まで行く。
これは、帰り際、行った人から聞いた話だが、山ノ鼻では景色は開けてないで、今までと変わらない景色とのことだった。 そこから、更に東方向(右方向)に歩いて牛首分岐(地図上は中田代三叉路)まで行けば、日光きすげや杜若のような花があちこちに咲いているとのことだった。
総じて言えば、山ノ鼻まででは尾瀬らしい景色には会えず、もう少しすすんで、牛首分岐までの中途まで行かないと駄目らしい。
 
 
7:15に青梅線の河辺駅前でバスに乗り赤城高原PAにてトイレ休憩時、バスのドライバーと添乗員さんを撮った。
鳩待峠にはこのような小型の観光バスしかは入れないそうだ。勿論マイカーも駄目だそうだ。
 
 
沼田出口にて関越自動車道から降りるところ。
ここからは、国道120号線を走り、戸倉を経て鳩待峠まで行きます。
 
 
鳩待峠の看板前にて、バスの添乗員さんに写してもらった。
 
 
鳩待峠の情景
バスが鳩待峠についたのは10:35。身支度をして歩きはじめたのは10:55。気温は20℃。 その歩き始めの最初のショットです。
 
 
鳩待峠〜山ノ鼻間の情景は、概ねこのようなものでした。
 
 
鳩待峠〜山ノ鼻間にある標識
 
 
ずっこけた階段。結構隙間があるのでうっかりしてしまった。
向こう脛を強打してしまったので、谷川の水で冷やしたりして30分ほどロスしてしまった。
この後、30分ほど進んだが時間も過ぎたので、向こうから来る人に山ノ鼻まであとどの位かと尋ねたら「10分ほど」とのことだった。
だけど、バスの時間や弁当の時間も考えてそこで弁当を食べ引き返すことにした。
引き返すのは残念だったけど、支給された弁当の味の美味さに救われる思いだった。 包装紙を見れば、井上食堂の「まいたけ弁当」と書いてあり、後でバスの添乗員に聞いたら評判が良いそうだ。
バスは、14:15に鳩待峠を出発し、途中、関越道で土砂降りの雨と渋滞に会いながら河辺駅前に着いたのは18:10、帰宅は18:30でした。ヤレヤレ。
 
 
 
思ったことは、尾瀬はこれでお終いだということ。もう、再び来ることは無いだろう。いくら三浦何某かが次にエベレストに登ってもだ。
聊かの寂しさはあるが仕方ない。 残念なのは、江間章子の「夏の思い出」が実感できないこと。
心密かに、来年から毎年、夏が来たら思い出そう思っていたのにだ。 音だけで我慢するしかない。
・・・夏が来れば思い出すのは、弁当の味かもしれない。・・・せめて千疋屋のメロンくらいにしたいもの。・・・終焉のときには。
 
 
もう一つ、思ったことを追記する。
今回のように、憧れが強いと人は冷静さを失い、研究不足となり、結果として大きな予実差を産む。 熱烈な恋愛結婚が、日ならずして破綻するようなものだ。
予実差を埋めるのは事前の研究であり、研究のアウトプットは実行可能な計画だ。
でも、一番大事なのは人間のマインド、「憧れ」ではないだろうか。
いのち短し 恋せよ少女(おとめ)
朱(あか)き唇 褪(あ)せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日の月日は ないものを
と言うではないか。(吉井勇作詞・ゴンドラの唄」より)
人間のマインドと事前の研究を引き比べ、 人間のマインド>>事前研究なら「冒険」、人間のマインド<<事前研究なら「観光」、だろう。
先日(7月19日(金))、NHKテレビを見ていたら、 ある著名な脳神経科医(コロンビア大学医科大学院教授 オリバー・サックス:「レナードの朝」の著者) が面白いことを言っていた。
「癲癇や鬱の患者に与える抗精神病薬は、患者を生気のないゾンビのような存在にしてしまう。 素晴らしく刺激的でドキドキするようなスリルのある世界を取り除いてしまって、何も無い灰色の世界にしてしまう」
と。
憧れが強いと人は冷静さを失い、丁度した癲癇症状に陥るとも考えられる。
であれば、旅行の場合、事前に徹底的に研究するのは、言わば抗精神病薬を投与するようなもの。 刺激的でドキドキするようなスリルのある世界を取り除いてしまう可能性も無いとは言えない。 従って、憧れ偏重型の旅もあり得るのではないだろう。(2013/7/21 追記)
 
 
 
 
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神原雅人
無題
はじめまして、尾瀬のHPを拝見しメッセージさせていただきました。 75歳の母が尾瀬に行きたいといい、なんとか連れていってやりたいと思い、道中の情報を探していた中で、 HPを見つけました。
母を筋力、持久力トの体力測定に行かせる事になりました。
有益な情報をありがとうございます。
(2016/3/17 10:43)