柘榴です。今年も沢山実をつけてます。・・・すべて柘榴酒にする心算。獲るのと仕込みが大変だけど。
でも、その結果はそれを凌駕するものです。老骨に鞭うたなくちゃ!
秋来ぬと 目にはさやかに 成る柘榴
風の音にぞ 驚かれぬる
古今和歌集は藤原敏行の替え歌。柘榴が風で落ちるのを心配したもの。本歌は、
秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども
風の音にぞ 驚かれぬる
この人の和歌は素晴らしい。流石、三十六歌仙の一人だけのことはある。
百人一首では、
すみの江の 岸による波 よるさへや
夢のかよひ路 ひと目よくらむ
だけど、この和歌より、秋来ぬと・・・の方が好き。藤原定家もさぞ迷ったことだろう。
この和歌は意味が良く解らないのでいい加減な和歌かと思っていた。だが何回も詠んでいる内、その素晴らしさに気がついた。
「すみの江の岸による波」の部分は、「よるさへや」の夜へ同音の繰り返しでかかっていく序詞である(評解小倉百人一首より抜粋)。
従って有意なのは、「よるさへや夢のかよひ路 ひと目よくらむ」の部分であり、その意味は、夜になってさへ、夢の中で見る恋の通い道でも、
人目を忍んでいるとなる。
そう理解すれば、この和歌の素晴らしさが分かるというもの。流石、三十六歌仙の一人だし、また百人一首の選者たる藤原定家の眼力の確かさも解る。流石である。
餓鬼のころからの、いい加減な和歌との認識は、70余年振りに書き換えられる結果となった。爺にしては70余年を掛けた進歩だと言えよう。
だが、全部で31文字の中で、そのうちの12文字が内容的には無意味な序詞に使われたとはね。
情報論的には駄作でも、芸術的には極めて技巧的な秀歌と言えるだろう。理性と感性の噛み合わないところである。
|