曹操の漢詩「歩出夏門行」(抜粋)
H27/6/14
石井俊雄
「中国名詩選」の中で曹操(DC155年〜220年)作の「歩出夏門行」を拾い読みした。
その「歩出夏門行」の長い歌詞の中で、特に心を引いたのは、「烈士暮年」の一句。
「烈士」はともかくとして「暮年」は我がことだからである。
読んでみると、勇気をもらえそうな良い詩であることが分かった。
曹操という人、ご存知の通り三国志時代(西暦220〜280年)に活躍した英雄である。
インターネットの百科事典であるWikipediaによると、
「後漢の丞相・魏王で、三国時代の魏の基礎を作った。廟号は太祖、謚号は武皇帝。」とある。
更に、「三国志」武帝紀には、
太祖(曹操)少(わか)くして機警(機知、警抜)、権数(権謀術数)有り、而して任侠、
放蕩にして行業を治めず。
とある。(この段、「陳舜臣著中国傑物伝」より孫引)
だから、この人、凄く面白い。
どこがと言えば、「任侠」という箇所。
我が国では、「任侠」と言えば、国定忠治とか清水次郎長とかを思い浮かべるが、
中国では、曹操が来る。
だから、彼我の間において、かなりの意味の差があるようである。
概して言えば、向こうさんのは、時間的、物理的にもスケールがでかいようだ。
中国での意味するところを理解するには、
音ではなく「侠気(おとこぎ)」と読んだ方が中国でのそれに近いようである。
よって、その面白さに免じて一部を抜粋してみた。
一読すれば、諸君もきっと壮心を新たにされることだろう。
「歩出夏門行」(抜粋)
(原詩)
神亀雖寿 | | 神亀は寿(いのちなが)しと雖(いえ)ども | |
猶有竟時 | | 猶(なお)竟(おわ)る時あり | |
騰蛇乗霧 | | 騰蛇(とうだ)は霧に乗るも | |
終為土灰 | | 終には土灰と為る | |
老驥伏櫪 | | 老驥(ろうき)は櫪(うまや)に伏すも | |
志有千里 | | 志は千里にあり | |
烈士暮年 | | 烈士は暮年になるも | |
壮心不已 | | 壮心不已(やまず) | |
(註)
神亀 | | 伝説上の長寿の亀 |
騰蛇 | | 龍のこと |
老驥 | | 年老いた駿馬 |
櫪 | | 厩(うまや) |
烈士 | | 信念をつらぬく士 |
暮年 | | 晩年、老年 |
壮心 | | 壮年の盛んな心 |
(付け句)
このままで終わるのは芸がないから、付け句を試みた。
私の人生感を仕切る価値観は「自立」だ。
だから、
を享けて、
と付けた。
自立の精神は、次世代に受け継がれるだろう、という意味だ。
漢文、あまり自信ないから、詩の意味するところを書いておいた。
漢文には二字製語って無いのではとの心配があるのだ。日本語だと「自立」は立派な二字の単語だが、
漢文は一字一字が基本だから、日本語の「自立」に当たる漢字一字があるはずだと思ったのだ。
でも、辞書で調べたら、「不能自立」で「自立できない」との例文があった。
だから、漢語で「自立」はあると言えるようである。
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