零戦のエンジン始動見学会レポート

石井俊雄
一昨日、12月1日(土)、所沢航空公園の中にある所沢航空発祥記念館で催された零戦のエンジン始動見学会 に行った。
1日付けの朝日新聞によると、
旧日本海軍の零戦で唯一、製造当時のエンジンを積み、今も飛行可能な機体が所蔵先の米国から17年ぶりに里帰りし、埼玉県所沢市の航空発祥記念館で1日、展示が始まった。実際にエンジンを動かすイベントもあり、大勢の航空ファンが見守った。
イベントは「日本の航空技術100年展」の一環。約10分間のエンジン始動が3回あり、約1300人の観客がプロペラを回して響く重厚なエンジン音に耳を傾けた。エンジンが止まると盛んな拍手が送られた。
機体は太平洋戦争中の1943年に製造された零式艦上戦闘機52型。配属先のサイパンの飛行場が米軍に占領された際、ほぼ無傷の状態で収容された。零戦研究などに使用された後、米カリフォルニア州のプレーンズ・オブ・フェーム航空博物館が購入し展示。栄21型エンジンを積み、現在でも年間15〜20時間、空を飛んでいるという。
ということである。
小生も、前日にそのことを知り、急遽、早起きする決心をして参加し、寫眞数枚と動画をゲットして来た次第である。
佐高八期会HPに掲載し皆さんの視聴に供したい。
 
 
エンジン始動中。これは、初日の3回あるエンジン始動の最初の始動のものだ。11時丁度に始まって10分間続いた。 この写真でのエンジンの回転数はアイドリング程度だが、終りに掛けて回転数を上げて見せてくれた。 前に動かないのが不思議なほどだった。近くにいた詳しそうな人に、 「どうしてあんなに回転を上げても前にすすまないのだろう?」と訊いたところ、 「脚にブレーキが掛かってるから」との返事だったが、「えっ?」という感じだった。 もっと何かの要因で前に出ないのに違いないと思ったが、それ以上は不明。 だが、今にして考えると、プロペラは可変プロペラだろうから、 それを回転軸に直交する角度にセットすれば推進力は低く抑えられるのでそうしていた可能性が高いと思ったりしている。 3月の始動イベントに行く人があれば確認して欲しい。
 
 
エンジンを停止後、操縦席から整備士が降りるところ。
 
 
整備士だ。許しを得て撮らせてもらった。
私は、日頃はご存知のとおり、つまり控えめな人だが、好きなこととなるとズーズーしくなるようだ。 日本語が通じる人が一緒だったので、その人にお願いして、その人から当人に話をして了解をもらった。 その人がいなかったら、多分、話しかけたりしなかっただろう。
兎に角、西洋人は機械が好きだ。この整備士の方も、好きでやっておられるのだろう。 そんな文化があると思う。そうでなければ零戦が稼働できる状態で保持されているはずがない。 羨ましい気分がすることだった。そんな敬意を表したつもりである。
日本人は、そこまで機械に馴染んでいない。 というのは、街でよく見かける自転車。ガラガラ音を出しながら走る自転車もままあるが、 そのチェーンを見ると茶色の錆が全体を覆っている。 特に、若いご婦人のに多い。・・・これは、機械というものが身に染みてない証拠であると同時に、 機械文明が定着してない証でもある。 こんな非機械文明社会が原発なんて似合わないのかもと思ったりするのは思い過ごしだろうか。
機械文明社会と非機械文明社会を分かつものはそれだけではない。 前者が、人力ですることを厭うのに対し、後者は厭わない。我慢強いのだ。 我慢強いのは美徳だが、機械化のモチベーションを欠く意味で問題なしとはしない。
 
 
左前方から。
 
 
後方から。
 
 
側方から。
 
 
正面から。
本当は、このままの位置で上の方に7〜8m上った位置からのアングルでの写真が欲しいのだが、 三脚持ち込み禁止の見学会なので無理なのだ。 靖国神社の零戦も、室内展示だから無理。 そう言えば、そんなアングルの写真、見たことない。 撮れれば、面白い。・・・トライする価値はあるかも。見たいから。
 
 
正面からのクローズアップ。
機体は太平洋戦争中の1943年に製造された零式艦上戦闘機52型のオリジナルだ。
餓鬼のころの話しをしよう。 それは、昭和18年頃だと思うが、私が5歳のころ、 佐賀の目達原(めたばる)にあった陸軍の飛行場で戦闘機が駐機しているのを間近に見た記憶がある。 戦闘機は三式戦といって「飛燕」と言う飛行機だ。 どうゆうわけか、一般道の直ぐ脇に道路側を向いて、即ち、小生の方を向いて駐機していた。 手を伸ばせば届く程の距離だ。2機並んでいたと思う。 あの飛行機は、駐機するとき、機首が上を向くので、子供心にも吃驚するほど大きく見えたものだ。 我ながら言葉を失くしたのを憶えている。 その時の三式戦の姿勢は、丁度、この零戦の姿勢に近く距離はもっと近かったと思う。 小生は、5歳のころだから、それは大きく見え、覆い被さられるようだった。 もっとじっくり見ておけばよかったと思うが還らぬ夢だ。
 
 
右前方から。
 
 
後背上部から。
 
 
 
 
朝日新聞によると、
78年と95年に続き、3回目の里帰り。過去2回は実際に空を舞った。 航空発祥記念館の坪井健司館長は「エンジンの老朽化などで、日本でエンジン音を聞くことができるのは、 これが最後になるかもしれない。現在まで続く日本の航空技術水準の高さを体感してもらえれば」と話す。
展示は来年3月31日まで。エンジン始動見学会は2日と3月30、31日にもある(雨天中止)。 問い合わせは同記念館(042・996・2225)。
とのことである。
小生は、見学する価値は十分にあると思う。
だが、問題もある。というのは来観者の数と観覧可能者数とがアンバランスなのだ。
小生の実体験によると、朝、9時に会場に到着したが、その時点で既に整理券が無くなっていたのだ。 随分、文句を言う人も多かったが、如何ともし難いというところだった。 そんな人は、皆、音だけ聴こうと、会場外に集まっていた。
本当に酷な話しである。蒲焼の匂いだけ嗅がせて、うなぎは売り切れだというのに等しい。 こんな残酷なことを平気でやれるのも非機械文明社会の文官ならではのこと。 恐らく自分がしていることを知らないのだろう。
小生は、そんな会場運営上の問題の犠牲者や、遠方からのアクセス困難者や、何より皆さんに観てもらいたいため、 撮ってきた動画を掲載することにする。 15秒のと、35秒のと、1分41秒のがあるが15秒のを貼り付けておく。 ご覧になりたい方は、ここをクリックして欲しい。
他のも貼り付けたいが観るのに時間が懸かり過ぎるという懸念があるため暫く差し控えておこう。
なお、クリックしても、画面が出るまでに相当時間が懸かる可能性があるので覚悟が必要だ。 パソコン環境が光回線ならそれほどでもないだろうが、ADSLなら数十秒はゆうに懸かると思う。
動画を観るためには、"Quick Time Player"をインストールしておく必要があるだろう。 ネットで"Quick Time Player"をキーにして検索すればアップルのダウンロードサイトに当たるので、 そこからインストール出来るだろう。勿論無料だ。アップルは大手だから如何わしくもない。
以上が、今回の見学会の状況だが、来てよかったと思った。 この零戦のエンジンは「栄21型」のオリジナルとのこと。
餓鬼の頃、よくニュース映画で零戦の飛び立つシーンなど観て、零戦のエンジン音も聴いてはいた。 だが、生で聴くのは初めてに近い。 近いと言うのは、餓鬼のころB29を追って頭上の佐賀上空を飛ぶ零戦2機の爆音を聴いたことがあるからだ。 だが、その時の体験で憶えているのは、 低空(恐らく100m〜200m程)で小生の真上を西南西の方向に飛んで行った B29の発するバリバリというとてつもない爆音だ。 暫くして、小さな戦闘機が二機編隊で同じ方向に足早に飛んで行ったことは憶えている。 その時零戦の音は聴いたはずだが特段の印象と言える程のものはない。 だが敵機を追う零戦が頼もしく思えたものだ。 餓鬼の頃、7歳のときの思い出だ。その時以来の実機の音を聴けて本当によかったと思う。
小生がそのB29を見たのは、水ヶ江の横小路というところ、丁度、佐賀城の堀の南東の角辺りだから、 他にも聴いたり見たりした方がおられるのではないだろうか。 昔、伯父貴にその話しをしたら、「あれはねぇ・・・」と言って何か話をしてくれたことがあるが、 中味は忘れてしまった。だが、伯父貴も知ってるくらいだから、 結構有名な出来事だったのではないだろうかと推測している。
掲載するまでに時間を要したのは、撮影した動画の解像度が高すぎて、そのままネットに出しても、 画面を大幅にはみ出てしまうため、解像度を削るのに四苦八苦したためだ。 やっと、無料のフリーソフトを見付けて今日の掲載にこぎ着けた次第だ。 これからは、少し動画を扱って行こうかなと思っている。皆さん、応援よろしく頼みます。
それに、戦争の実体験、我々の年代では実戦経験は無いが、それに纒わる話しはいろいろあるはずだ。 我々は、正直いえば残りの方が少ない年代になってかなりになる。 そんなとき、それを吐き出してこの世に残すのも何か有益なのではないだろうか。 何故なら、実体験にはそれ自体価値があるのだから。 そんな意味でも協力頂ければ幸いだ。皆さん、応援よろしく頼みます。
 
 
 
 
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零戦レポート見ました
森永 明
写真が素晴らしい。ゼロ戦の美しいフォルムが十分に表現されていますね。
空力的に極められた翼。サインカーブに捻られた前縁が充分に判ります。
また、翼厚が翼端に向かって二段階で薄くなる様子が良く解りました。
空気の流れに包まれた機械は美しいものです。

エンジン音も聴きました。いい音です。
ハーレーダビッドソンを一桁大きくしたようです。
航空機のレシプロエンジン音はどの機体も似ています(最近UtubeでDC-7cの 始動音をみました。R3350エンジンは栄21よりふた回りぐらい大きいが)。

僕も78年最初の里帰り時、埼玉のホンダのエアーポートで飛行を見ました。
エンジン始動時に白煙を排気口から吹き出す姿にびっくりしました。

目の前をローパスしたり、反転上昇したり、いろいろな飛翔すがたを八ミリ に収めました。いまもそのフィルムは大切にしています。素人保存なので フィルム面にクラックが入っていますが。

今回の里帰りは11月になって知りました。26日に機体の組立が限定人数で公開 実演を知り応募したが、相変わらずハズレでした。
次回3月には行きます。ゼロ追っかけもんは年内に見に行きます。

レポートありがとう。(2012/12/4 12:21)
 
 
お礼とお願い
石井俊雄
コメントありがとう。貴兄がこの記事に対する初めての反応です。
小生としては、相当反応があるだろうと思っていたのですが、 余り静かなので女の子でも相手にしてるような気がしていました。
今度、その零戦のフィルムの視聴会をやってもらえれば有難いです。 会場は小生の方で何とかしますので、ご検討ください。
(2012/12/4 14:19)