熟年旅行パート[―山形の旅

平成30年11月1日  山下永二
塾年旅行も8回目となった。山形の旅と決まったのは、昨年東九州の旅に宮崎在住の園田君が参加し、来年は、山形県鶴岡の「クラゲの水族館」へ行けば参加したいと言ったことがきっかけで、山形の旅が実現した。残念ながら、園田君の愛妻が今年亡くなられたそうで参加できなかった。実をいうと、私は35年位前 東根市の第六師団司令部で2カ年間勤務したことがあり山形について多少知っていた。特に天童は車で10分位だったのでよく銭湯(温泉)へ行った。最初 山形は鳥取と同じように観光になるような処はあるのだろうかと思ったが、それなりの見どころがあるものだと悟りました。
今回は、いつものメンバーの9名が10月23日〜25日に山形へ向った。
  1. 第1日 10月23日(火) 晴
    ◎ 殿様が変転した米沢城
    米沢城は、市街地の中心に位置し土塁を築いた平城で、本丸の跡地に上杉神社がある。
    米沢城には藩主の銅像がやたらと多いことに気づいた。武田信玄、上杉影勝、上杉鷹山、直江兼継、伊達正宗が城の入口付近に立ち並んでいる。
    説明によると鎌倉時代に長江氏が本拠地として約150年続き、室町時代に伊達氏が侵略し支配した。正宗はこの城で誕生したという。戦国時代 正宗は豊臣秀吉に追われて岩手の岩出山城に転封され、関ヶ原の戦いの後青葉城の仙台で築城。変わって米沢は蒲生氏郷が支配した。更に秀吉は家康を警戒して、上杉景勝を越後から120万石会津へ転封させ、その時景勝は家臣直江兼継に30万石を与え米沢城主を置いた。上杉家は関ヶ原合戦で石田三成に与したため、家康から30万石の米沢城主へ減封された。
    更に15万石まで減封され財政は1/8になった。家臣団約6千人をリストラしないで抱え込み、これに追い打ちを賭けるように天明の大飢饉が重なり、借財(約200億円)は累積し貧窮を極めた。第9代上杉鷹山が心魂を込めて財政再建に取りくみ建直した伝説は有名である。
    「成せばなる 成さねばならぬ何事も 成らぬは人の成さぬ成りけり」の辞を発し家臣団以下領民に鼓舞し意識改革したことは広く知られている。
    ・ 昼食は、市内の老舗蕎麦屋で頂いた。山形はそばがうまいと聞いていたが評判どおりだった。
    ◎ 断崖絶壁の石畳みの階段を登る山寺 立石寺
    立石寺は、平安時代初期 最澄の弟子円仁(慈覚大師)が開山したという。
    山寺に着いたのは午後3時頃だった。奥の院まで1015段の絶壁石段を登るには躊躇したが、未だ若いぞと気持ちを奮って登ることにした。8名が根本中堂をスタートし、 とりあえず「せみ塚」まで行くことにした。「せみ塚」は松尾芭蕉が「閑さや 岩にしみ入る蝉の声」の有名な句を詠んだ処である。急坂で足場が不安定な石段のため、時々体のバランスを崩しそうになったり息切れがした。幸いに手すりがあってこれに頼りながら登った。「せみ塚」から展望台のある「五大堂」まで580段あるという。
    牛島、坂下、深町、山下、中村の5名が挑戦した。展望台から山寺が眼下に見えて気持ちがすっきりした。元気な女性のガイドは奥の院まで行きますか問うてきた。着いたのが午後4時だったし、陽が落ちて薄暗くなりつつあったので降りることにした。
    降っているとチャイナ語を話す団体が登ってきた。こんな処にも中国人は興味を持って来ているのだと思った。考えてみれば、円仁は平安時代初期に入唐し9年間修行して学んだ天台宗は中国が原点であり、歴史が伝えられているのだろう。
    山寺へは、来客を連れて3回位行ったことがあるがこんな苦労をすることはなかった。
    ◎ 五ッ星「滝の湯」のセンス(天童市)
    山寺から15分でホテル「滝の湯」に着いた。ロビーはかなり広く更に別館ができ、 天皇陛下が宿泊されるまで大きくなり、サービスも行き届いて素晴らしいホテルにな っていた。浴場前で風呂上がりに生ビールをコップ一杯サービスしてくれたのは、今 までの旅行では初めてだった。又自ら卵を温泉の熱湯で茹でることもできるサービス もしていた。1000uもある大浴場や贅沢な部屋も大きくゆとりがあり、至るところに センスのよい気配りを感じた。
    ・ 山形在勤中 ここには、美人のママさんがいて宴会等でよく使っていた。当時は、ママさん自らお酌して回りサービスをしてくれた。聞いたら、103歳で今も健在だという。
  2. 第2日 10月24日(水) 曇時々雨
    ◎ 秋雨のなか下りか登りか錯覚する最上川舟下り
    旅行前から24日の天気は雨模様だということは承知していたが、この日だけは、天気を回復して欲しいと願っていた。最上川舟下りの出発地 古口に着いたとたんに雨が降りだした。ついてないなと思いながらも、途中で止んでくれたから気持ちは治まった。
    中村さんが「これって登っているの、下っているの」と問いかけてきた。確かに分かり難かったが、舟下りと云うから下っているのだろうと思うことにした。紅葉の舟下りを期待していたが、未だ早かった。下舟した後羽黒山神社 随神門へ向った。
    ・ 随神門付近は、宿坊が多いようで、昼食は、羽黒山門前の宿坊で羽黒山神社に提供している精進料理を食べた。女将が丁寧に手作りの料理を説明してくれた。
    ◎ 古来1400年の修験道の中心的存在 羽黒山神社
    出羽三山は、羽黒山、月山、湯殿山をいう。古くから修験道の霊場として山岳信仰の聖地の一つである。羽黒山を“現在”、月山を“過去”、湯殿山を“未来”と神様の役割があるらしい。
    羽黒山神社の2446段の石段を登ると奥の院へ辿り着くそうだが、小雨も降り羽黒山の玄関口 随神門から五重塔まで行くことにした。ガイドの案内で古色蒼然とした杉の木立の中で石段を登った。五重塔は平将門が創建したという。
    随神門に戻り、貸切バスで羽黒山(214m)、月山(1984m)、湯殿山(1500m)の三神を合祀した三神合祭殿に行ってお参りした。雪で登れない時にここでお祈りできるように創建されたようだ。月山へは、9月末で閉山となったので断念した。
    ◎ 創業300年の老舗旅館−萬国屋 (あつみ温泉)
    鶴岡から新潟方向へ海岸道を約1時間走り、日本海の近くではあるが、辺鄙な山あいに温泉街があり約300年もの間、10階建の老舗旅館が繁栄を続けているのは不思議な気がした。秋田や新潟からも来客があり、それだけの魅力があるのだろうと思った。
  3. 第3日 10月25日(木) 晴
    ◎ 世界一のクラゲ水族館(鶴岡市立加茂水族館)
    クラゲは、海の中の動物だそうで世界で約3000種あり、日本周辺で200種類あるという。この水族館は約50種類のクラゲを大小の水槽の中で色とりどりの照明にライトアップされ游泳するクラゲが幻想的に展示されている。中でも直径5mの水槽に数千匹が群泳するミズクラゲは見ものであった。年間約50万人が訪れるという。
    ◎ 古武士の世界感を描く作家藤沢周平の記念館
    藤沢周平記念館を訪ねたいと言ったのは、牛島さんでした。私は藤沢周平の小説を読んだことはなかったが、TVで「蝉しぐれ」や「武士の一分」等で見て下級武士を機微な人情を描く作品には共感が持てた。藤沢周平は鶴岡市生まれで山形師範学校を出て地元の中学校の教師をしていたが、結核にかかり6年の闘病生活後、東京に出て会社務めながら小説を執筆した。昭和48年「暗殺の年齢」で直木賞受賞し作家生活に入った。平成9年に69歳で亡くなれるまで江戸時代を舞台に下級武士や庶民の哀歓を描き数多くの作品を世に出した。この記念館は、長女 遠藤展子さんが鶴岡市公園内に開館したという。
    ◎ 謎の湯殿山神社本宮
    旅の最後は、湯殿山神社になった。約1時間位貸切バスで走って湯殿山本宮に着いた。
    大きな赤い鳥居が見下ろすように立っていた。神社には本殿や社殿がないのが特徴で湯殿山自体が神様だそうで人工的な信仰の場をつくることは禁じられてきたという。
    本宮の総奥は、更に神社のバスで15分位登った処にあるという。駐車場で下車して、徒歩で歩いて10分登ったところに小さな小屋みたいな狭い場所で靴を脱がされ裸足になった。10名位の単位で神主がお祓いをした。その後仮に組まれた鉄パイプを手で支えながら裸足で熱い温泉湯が流れる岩を登って小さな山峡が見える狭い場所にたどり着いた。そこには、山の合間が見え小さな川がそそり流れていているだけで本尊が何処にいるのか分からない新興宗教のような感じがした。奇妙な体験だった。謎の神様がいる本宮である。
  4. 旅の最後に
    山形は日本でも7番目に入る大きな面積で市町村の至るところに温泉が湧出る日本一の温泉県と言ってよい。東北中央自動車道、山形自動車道、日本海東北自動車道の3本の高速道路が縦に走り、山形新幹線と交通網は整備され35、6年前と変わって発展している山形県を概観した。マイクロバスを貸切って気ままな旅行をしながら、米沢から北上し、横断して日本海側へそれから南下して概ね一周して山形駅から帰京した。
    紅葉が未だ早かったことと雨の最上川下りとなったのは残念だった。
    旅の途中、呑み仲間だった筒井さんの急逝を知りました。お悔やみ申し上げます。
  5. 写真
     
      
    上杉鷹山像前
     
      
    五重塔前
     
      
    萬国屋前
     
      
    クラゲ1
     
      
    クラゲ2
     
      
    クラゲ3
     
      
    クラゲ水族館前
     
      
    湯殿山神社本宮鳥居前
 
 
 
 
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