「日刊工業新聞電子版」から抜粋
電力各社、トヨタ式「カイゼン」に希望の光 高コスト体質から脱却
2/8(木) 16:33配信 日刊工業新聞電子版
大手電力会社にとってコスト削減が急務になっている。原子力発電所の再稼働時期も不透明な上に、地域独占が崩れ、顧客の他社への流出が続くからだ。
中でも東京電力ホールディングス(HD)は福島第一原発事故の廃炉・賠償費用ものしかかり、「トヨタ式」の導入で高コスト体質からの脱却を急いでいる。
「(部門によっては)10倍の生産性を目指さなければという話も出ている」。
東電HDの武部俊郎統括CKO(チーフ・カイゼン・オフィサー)は業務効率化にかける思いを語る。
同社では2015年1月にトヨタ自動車元常務の内川晋氏を特任顧問に招き、「生産性倍増プロジェクト」を始めた。
火力発電部門など一部の事業会社で先行して始まり、現在では部門だけでなく、関連会社26社にカイゼン担当職であるCKOを置く。
作業日数や人員、所要時間などで測定する生産性では倍増を掲げたが、すでに5倍以上の事例もあり、着実に成果が出始めている。
現場での作業時間短縮を皮切りに、資材購入や工事発注で取引先と共同で原価低減にも着手。子会社や関連会社に出向し、外注していた業務のムダの洗い直しも始めた。
カイゼン事例はグループ会社で共有しているが、将来的にはAI(人工知能)を活用して、カイゼンの切り口を探すことも検討している。
トヨタ式を導入するのは、東電HDだけではない。中部電力も17年4月に内川氏を顧問に招き、送配電事業での効率化を始めた。工事現場での工期短縮などを目指している。